水なき海の戦ひ

解説

ポーランドとドイツとの協同製作になる映画で、F・A・オッセンドゥスキー作の小説を映画化したもの。監督はミハエル・ワッチンスキ、撮影はS・スタインヴュルツェルというスタッフで、音楽はチャイコフスキーの曲に基づいてヘンリク・ヴァルスが作曲し、歌詞は出演俳優の一人であるオイゲン・ボードーが書いている。俳優はボードー、ノーラ・ナイ、アダム・ブロチッチ、ウィトルド・コンチ、マリー・ボークダという顔ぶれである。かつて輸入上映されたポーランド映画「あらし(1934)」はドイツ語版であったが、これはポーランド語であるから、我国に上映される最初のポーランド・トーキーと言えよう。

1932年製作/ドイツ・ポーランド合作
原題または英題:Schrei der Wueste

ストーリー

荒涼たるモロッコの熱砂果てるところに聳える一群の山塊がある。その一角に砦を築いてアラビヤ原住民の酋長アブダラーは蟠居していた。この砦はフランスのモロッコ駐屯軍にとっては難攻不落の要塞であるにとどまらず、その所在さえも明らかには知られていなかった位である。アブダラーは獰猛な部下を率いて常に隊商を掠奪し、帰順の意思は少しも見えないので、フランス駐屯軍も最後の手段に訴えて一挙全滅させてしまおうと機を覗った。苦心の結果ようやくアブダラーの山塞への山道を発見したので、外国人部隊のポーランド人の軍曹ミルチェック青年が現地の者に変装して単身山塞に乗り込み、敵状を視察すべき任務を受けた。彼は見事に使命を半ばまで果たした時、正体を看破されて、アブダラーに死刑を宣告され、土牢に投げ込まれてしまう。ところがアブダラーの娘ヂェミラは美しい白人の顔を忘れ得なかった。山塞に生まれ育った彼女は白人の世界、文明の社会に燃える様な憧れを抱いていた。その憧れがミルチェックへの恋情となったのである。折しもアブダラーは豪商の隊商が近づいたとの急報に接して出発した。ヂェミラはミルチェックを逃走させ、自らも彼と再会の日を期して山塞を出奔した。町から町へ、酒場から酒場へ、ヂェミラは歌と踊りで流れて行き、思いかなってミルチェックと逢うことが出来た。けれども野性のままの烈しい火の様な情熱は若いミルチェックにとっては寧ろ畏怖すべきものだった。そうして彼が彼女を避けようとしていた時、彼の友人から紹介されたイギリス娘ジェニーとミルチェックが話しているのを見て、ヂェミラは誤解し嫉妬し、復讐を誓った。時しも外国人部隊はアブダラーの山塞討伐に出発した。ヂェミラは急ぎ帰って、此の事を報告した。アブダラーは逆襲の挙に出て、渦巻く熱砂の天地に激しい戦闘が続けられた。そして砂漠に死の静寂が再び訪れた時、ヂェミラが見たのはミルチェックの死骸で、父アブダラーの惨死体であった。

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