悪魔の寵児

解説

「東洋の秘密」と同じくプローシュ・ラヴィノヴィッチ作品で、十九世紀に実在した盗賊マノレスク伝を、「悲歌」「ニーナ・ペトロヴナ」のハンス・スツェケリー氏が現代風に書改め、「嘆きの天使」「パンチネロ」のロベルト・リープマン氏が脚色し、「ヴォルガ」「大帝の密使」のヴィクトル・トゥールジャンスキー氏が監督した。主なる出演者は「ロベルト」「大帝の密使」のイワン・モジューヒン氏、「ニーナ・ペトロヴナ」「妖花アラウネ(1927)」のブリギッテ・ヘルム嬢、「悲歌」「帰郷(1928)」のディタ・パルロ嬢、「二重結婚」掘削機一〇一〇号」のハインリヒ・ゲオルゲ氏の四人。撮影は「ニーナ・ペトロヴナ」「ハンガリア狂想曲」のカール・ホフマン氏が担当している。(無声)

1929年製作/ドイツ
原題:The Prince of Adventures Manolescu

ストーリー

パリっ子のマノレスク。喰い詰めたパリを後にするべく停車場でモンテ・カルロ行きの特急列車を待っている時ふと一人の女を見出す。白蛇のような妖しいその美しさ。若いマノレスクの血が涌いた。しかし女は剛の者、持ちかけたマノレスクを美事に土俵でうっちゃて発車間際に現われた胸の厚い男と列車に乗り込む。男は当時お尋ね者のジャック、女はその情婦のクレオだった。折柄、一隊の警官がやって来る。ジャックは風を喰らって汽車から篭抜けで姿を消したが、女はどうしようもない。顔色変えた彼女はマノレスクの部屋に身を忍ばせる。おかげで探偵の眼は逃れたが、今度はマノレスクが離さない。こんどはクレオの負けである。モンテ・カルロでも二人は一緒だった。いつかお互いは離れ難い仲になりかける。その中ジャックが飛び込んで来て、一悶着あったが、元々ジャックは兇状持ちの身、敢えなく御用を喰ってしまう。そこで、天下晴れての二人だったが、行詰るは金、--女を喜ばせたい一心からマノレスクはホテル専門の賊となった。それから、パリ、ロンドン、ベルリンと目星しい場所をかせぎ廻る。再びパリへ帰って来た時、出獄したジャックの一撃がマノレスクを待っていた。彼は病院へかつぎ込まれる。その時、彼をやさしく介抱して呉れたのはジャネットと呼ぶ看護婦だった。女から女へ、荒み切ったマノレスクであったが、この可憐な乙女には心惹かれた。女の純情を初めて知った身にはクレオのただれた愛情もいとわしい。二人は人目をさけてスイスの山中に楽しい愛の巣を営んだ。併しクレオはこれを知った。美しい白蛇の怒りはすさまじい。マノレスクの罪状は、嫉妬に燃える彼女の口から警察に告げられた。スイスの山の大晦日、マノレスクとジャネットの侘び住居は不意の来客で賑わった。楽しい思い出の夢をこの山小屋に残してマノレスクは曵かれて行った。出獄の日を待つという、純真にみちたジャネットの言葉を唯一の慰めにして。

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