リーベ

解説

フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの著した小説の映画化で、「ニュウ」の監督者であり「嫉妬(1925)」の原作者であるパウル・ツィンナー氏が脚色並びに監督したものである。主役を演ずるのは同じく「ニュウ」に主演したドイツ劇壇の花エリザベート・ベルクナー嬢で、これを助けて「プラーグの大学生(1926)」出演のアグネス・エステルハツィ嬢、ハンス・レーマン氏、パウル・オットー氏、エルザ・テマリー嬢、等が出演している。(無声)

1926年製作/ドイツ
原題または英題:Love Liebe

ストーリー

王朝華やかなりしルイ十八世の頃、フランスの社交界はランジェエ公爵夫人の噂で持ち切っていた。彼女の美貌の為には幾多の貴族は地位をも名誉をも失って行った。がある時、このランジェエの公爵夫人は舞踏会の夜に、ボナパルト士官学校出身の青年貴族モントリヴォー侯爵にあい、その武骨ながら世慣れぬ風姿の中に心を惹くものを感じて、少なからず心を動かしたが、見識の高い彼女には己れからその意中を打明ける事はできなかった。が、モントリヴォーとの交わりが度重なるにつれ、二人は燃える様な情熱の虜となった。モントリヴォーの友人達は彼女に近づく事の危険を彼に説いて、別れる事を切に勧めた。モントリヴォーも始めの内は、それに耳をかさなかったが、次第に女を恐れる様になった。で、侯爵の机上には、封を切らない公爵夫人の手紙が高く積んで行くようになった。今ではもはや一個の弱い女性としてモントリヴォーを愛している公爵夫人は侯爵の冷かな態度に半ば狂乱して行った。しかし、モントリヴォー侯爵が彼女からの最後の手紙を受取った時、さすがに彼はその文面の唯ならないのに気づき、会見を承諾したが、ちょっとの事で行き違いとなってしまった。で、彼女はいよいよ頼みの綱の切れた事と信じ、一人淋しくスペインの修道院に入った。その後、モントリヴォー侯爵は己れがなお依然として彼女を愛している事実に目覚め、彼女を修道院に尋ね、愛を誓い、彼女の自由を求めた。しかし、今は神に仕える身となった女は、侯爵の願いを断った。その夜、侯爵は闇に紛れて彼女を奪い出すため修道院内に忍び入り、彼女の居間の扉を開いたのであったが、その時、彼の眼に入ったものは、淋しく一人この世を去って行ったランジェエ公爵夫人の悲しい亡骸であったとは。尽きせぬ憾み。修道院の夜の風は冷たく吹いた。

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