メニルモンタン

解説

フランス、否欧洲の「救いを求むる人々」と称讃された映画で無名の青年ディミトリ・キルサノフ氏が同じく無名の一少女ナディア・シビルスカヤ嬢を主役として独力製作したもので、キルサノフ自ら原作を書き監督し、クルーアン氏と共に自らカメラを廻して作り上げた。シビルスカイヤ嬢を助けてヨランド・ボーリュー嬢、モーリス・ロンサール氏、ギイ・ベルモーヌ氏、ジャン・パスキエ氏等が出演している。因みに本映画の製作されたのは一九二五年で、キルサノフ、シビルスカイヤ映画としては第二回作品である。一般に発売されたのは1927年一月であるが昨年一月末にヴイユウコ・ロンビエ座に於いて特別封切された。無声。(全5巻だが、公開時検閲により2巻にカットされた)

1925年製作/フランス
原題または英題:Menilmontant

ストーリー

パリの塲末のある工場に働く二人の姉妹娘があった。彼女たちは真面目な正直な処女で夕方になると貧民窟メニルモンタンのある貧しい家屋裏の部屋に帰って来て、乏しい労銀を合せ力になり合って貧しくとも寂しくとも幸福に暮していた。彼女達は八年前に両親を失った。百姓の父は妻が仇し男をこしらえたのを怒って姦夫姦婦を殺害して自首したのだった。それから住み馴れた村を去って彼女達は大都会の渦巻の中に二人だけの生活を始めたのだった。月日の流れと共に恐ろしい追憶も薄らぎ、姉妹にも人生の春が訪れた。ある晩妹は宵闇の小路に若い男と睦語を交わした。その後のある日曜日の夜、姉娘は妹の帰りを空しく待ち明かした。しかし幸福は短かった。毎晩彼女は恋人をいつもの場所で空しく待った。そしてある夜彼女は彼の姿を見た、彼女の姉を抱いている恋人の姿を。若い彼女はパリの街を一晩中歩きまわった。そして遂に姉の許へは帰らなかった。冬が去るころ若い女が乳児を抱いて慈善病院の門を出た。餓えと寒さと絶望とに彼女は河岸から身を投げようとしたが、泣き立てる児を思えば死ぬことも出来なかった。疲れ果てて腰掛けに座った彼女の傍にみすぼらしい貧乏人が来て腰を下した。彼は一言も云わず乏しい食物を彼女に与えた。咽び泣きながら彼女は鵜呑みに貪った。夜が更けて不安に慄えながら母になった娘は歩き始めた。思い出の小路に何時とはなしと来てみると、行人に春を売ろうとする女が佇んでいた。それは彼女の不幸な姉だった。彼女もまた不実な男に棄てられ闇の女に身を堕していたのだった。不幸な姉妹は唯だ一目で全てを了解し合った。姉の部屋に一緒になった二人は昔通りの正しい生活を希う心で一杯になっていた。火が静かに燃え嬰児は眠りに就いた。姉妹は悲しかった。しかし、それは絶望の悲しみではなかった。やがて暁の光がさしそめし。新しい曙である。希望と約束に満ちた新しい生活の朝である。

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