豊かなる成熟
劇場公開日:1962年7月3日
解説
“キンゼイ報告”の映画版といわれるこの作品は、週刊誌の身の上相談を基に書かれた女流作家ガブリエラ・パルカの『イタリア女性は告白する』にヒントを得て、チェザーレ・ザヴァッティーニがシナリオ化したセミ・ドキュメンタリー映画。ザヴァッティーニは、映画化にあたり若くて優秀な十一人の新鋭監督を選出した。この十一人の中には、フェリーニの弟子ネロ・リージ、紅一点のロレンツァ・マツゼッティ、フランチェスコ・マゼリ、ジャンフランコ・ミンゴッツィなどがいる。テーマは一貫して、偏見に苦しむイタリア女性の姿を描いているが、ザバッティーニが総監督したともいえる。撮影は七人の手になるが、音楽はジャンニ・フェリオが総括して担当。出演者は、全部新人およびロケ先の素人を起用している。マレノ・マレノッティ製作。
1961年製作/イタリア
原題または英題:Le Italiane e L'amore
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1962年7月3日
ストーリー
*娘・母*・--ミラノ。男にだまされ妊娠して捨てられた娘が病院を訪れ、分娩の光景や育児の世界を眺めるうちに、新しい人生へのスタートを意識する。*子供の性教育*--ローマ。子供はどこから生まれるのか。幼い子供たちの素朴な疑問は大人を困惑させる。お医者さんごっこに興ずる子供への回答は、まことに無責任であるようだ。*少女と恋*--ローマ。生まれて初めての恋。多感な乙女の告白は大人をびっくりさせる。世間態をはばかり大騒ぎする母親と、物静かに説得する父親とが、対象的だ。*顔の傷*--ナポリ。下町の通りで、男に愛想をつかした女が別れ話を切り出していがみ合う。男は女の顔を傷つけるが、集った野次馬は、愛すればこそ、と男の側に同情する。*初夜*--ナポリ。船の中で迎える新婚旅行の第一夜。妻が昔ある男と関係したことを知って、一方的に責める夫。彼女は一生夫に頭が上がらないだろう。*成功への執念*--フロジノーネ、ティレニア、ローマ。歌手や女優になろうとする女たち。全てを犠牲にしても現在の拍手に酔いしれるのだ。*不貞*--ローマ。一見、いたって円満な子持ちの夫婦。だが夫は外で、妻は家庭でお互に浮気をしている。それでも空しい夫婦生活を続けていくのだ。*馬鹿げた結婚*--トリノ。結婚して二年、夫は突然冷たくなった。原因を知った妻のおどろき。夫は男色になったのだ。だが、それは離婚の理由にならない。いつも損をするのは女の方だ。*白い未亡人*--ガラティア。貧しい村で男は海外へ出稼ぎに行く。残された女たちは、その淋しさを強烈な踊りでなぐさめる。*法的別居*--ローマ。お互に善意がありながら、愛し合えなくなってしまった夫婦の感情を描いたはなし。*愛のあかし*--パルマ近郊のポー河。夏のある夕刻。河の畔で開かれた野外ダンスパーティーにやって来た恋仲の男女、愛のあかしをと男にせがまれ女は身をまかせる。その後で、男は女を身持ちが悪いとののしり、一方的に別れて行く。