郷愁のボルガ

解説

久しぶりにソ連の音楽映画が公開される。第二次大戦の戦災孤児が才能を認められ、国立音楽学校に入り、ピアノコンチェルトを弾きこなすまでが感動的に描かれる。使われる曲はグリンカ、チャイコフスキー、バッハ、ベートーベン、モーツァルト、ブレークらのもの。ワレンチーナ・スピーリナの脚本を、マリーナ・フョドロブナが製作・監督した。撮影はアレクセイ・ポルカノフ、音楽はレオニード・アハナーシェフ。主演はアンドリュシャ・デミヤノフ、ミーシャ・チャグレーフら少年たちで、脇役にレオニード・ガリスら。

1956年製作/ソ連
原題または英題:His Vocation

ストーリー

戦災孤児院“子供の家”はボルガ河のほとりにある。アリョーシャ(アンドリュシャ・デミヤノフ)もそこで育った。院長のマリーナ(アダ・ボイティック)が拾ってきたのだ。音楽好きの少年だ。町へモスクワからきたオーケストラを聞きに行った時、船に遅れた男を小舟に乗せてやった。それが指揮者だったのには驚いた。その夜、少年はいつまでもピアノをたたいていた。翌日少年が河のほとりで仲間を集めてアコーディオンを聞かせていたとき、あの指揮者ドウブルイニン(レオニード・ガリス)が通りかかった。彼は院長に申し出て少年をテストし、その才能を認めた。孤児だった指揮者は少年を自宅に預かり、国立音楽学校に入れてやることにした。彼のモスクワの家には、妻と音楽学校に通う息子ボーリヤ(ミーシャ・チャグレーフ)がいた。学校の面接の日、方々の教室を盗み見ていたアリョーシャはニコリスキー教授にぶつかり、その上ボーリヤのためにケンカをし、教授を二十分も待たせてしまい、入学を断られた。が、しおれたアリョーシャが棒切れで校門の格子をたたき“雨の歌”を自作自演していたところに、教授が通りかかり、改めてテストの上、入学を許された。--ボーリヤは学校で一番のピアニストだった。が、甘い母親のせいで、自惚屋でわがまま息子になっていた。今度の発表会でコンチェルトを弾くことになり、練習が始まった。アリョーシャは勉強に努めていた。ひそかにコンチェルトまで手をのばした。教授はボーリヤの技巧だけの演奏に満足できず、教室でそっと弾いていたアリョーシャに目をつけた。ボーリヤは嫉妬し、彼を孤児だと罵倒した。教授はソリストをアリョーシャに変更した。その日、アリョーシャは家に帰らなかった。ボーリヤの罵倒のせいである。思い余って教授の家をたずねた。教授があずかることになった。ボーリヤに父の指揮者が芸術家の心の問題について話した。--発表会の日マリーナ院長もはるばるやってきた。アリョーシャはみごとにコンチェルトを演奏した。拍手が長く続いた。

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