「マリオ! ルイージ!」恐怖の報酬(1952) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
マリオ! ルイージ!
『ザ・マリオブラザーズ』とは全く関係ないのですが(by Wikiやスーパーマリオの由来の記事)、
かってに、テンション上がってしまいました(笑)。
ちなみに、この映画で二人は双子ではなく、マリオはコルシカ島出身のフランス人。ルイージはイタリア人。同居しているというか、映画で描かれているのを見ている限り、ルイージが料理作ったりしてマリオの面倒見ています。
映画の筋も、まず街の様子を描き世界観を示し、物語が動き出すと障害に次ぐ障害。どうクリアしていくのか、仕事は成功し、高額報酬を手にできるのかと、まるでゲームにありそうな展開。
アメリカ資本が石油掘削を行っており、そこで労働して金を得ている人々はいるらしいが、労働者への安全管理と言う感覚はなく、事故が起こってもほぼ使い捨て。地元への還元はなく、さびれた町。衛生状態も良くなく、毒蜘蛛も普通に足元にいる。街のホテル兼バーでは、外から舞い込んでくる砂をきれいにするために、従業員はひたすら床を手作業で磨く。
マリオを始めとする、ビザがないから働けず、お金なく、餓死も視野に入った面々。
ビンバは職はあるが、給料の総てを飲んでしまい…、
ルイージも職はあるが、アスベストのような病で余命宣告。故郷に帰りたいが、金がない。
ジョーは他の国から飛行機で逃げてきたけれど、すっからかん。
そこに降ってわいたような高額保証の仕事。当然、危険極まりない。それでも、飛びつく男たち。採用枠は4人。所長自ら腕前を確認しての採用。妨害して、候補者を引きずり落とす場面も。でも、それでさえ、不測の事態への対応力を見られていたらしい。
($2,000。当時どのくらいの価値があったのだろう?今だったら、1,000万円でも、嫌だな。それくらい食い詰めていたというか、彼らにとっては唯一の手段だったのか)
そして、選ばれた3人の男と、来ない男の代わりとなった男。
ここまでのストーリーが長くて、割愛を希望する人が多い。実際、公開時はカットされていたとも聞く。
鬱屈した人々のやり取りが続き、しかも状況説明調。マリオに恋するリンダとの絡みも出てくるが、正直、そんなに見栄えのするものでもない。ストリートで踊る女性のステップの方が上手い。
ただ、ここをカットしてしまうと、マリオとルイージの関係の変化や、ジョーの変化が堪能できなくなってしまう。ルイージの家に居候させてもらって世話を焼いてもらっているようなマリオが、ジョーにべったりになって、対立構造になる様子とか。実際は文無しなのに、ホテルの支配人は、ジョーのたたずまいに騙されて優遇するものだから、冷遇されながらたむろしている他の文無しの一団との断絶も招いてしまい…。というか、己の力を誇示する駆け引きのためか、わざと突っかかるジョー。けしかけて、相手が暴力的になっても一歩も引かずに、相手をひかせるジョー。
それが、トラック運転のペア組にも影響して…、後の展開にもつながる。
そう、障害をどう乗り越えるかという面白さだけでなく、
4人の変化も見もの。特にマリオとジョーの変化。この二人で最後までペアを組めるのかと言うところも見もの。そして、ペアにはなっていないが喧嘩しているマリオとルイージは?ちょっと、皆から距離をとっているビンバはどう絡んでくるのか、最後まで孤高を貫くのか。ビンバの見せ場はあるのか。
私が無知なのだろうが、原油を体にまとったままで、火に近づいたり、煙草を吸って大丈夫なのかともハラハラ・ドキドキ。原油場面では、漫画『獣医ドリトル』の原油まみれの鳥救出作戦も思い出し、ハラハラ。『地獄の黙示録』の予告シーンも頭をよぎって、ハラハラ…。特に、その少し前のシーンで、ほっとしたのもつかの間の惨事を見ているだけに、ここもほっとさせておいて何かあるのではと。
そう、どちらの組も、勝って兜の緒を締めよ的な格言を述べたくなる展開。最後まで気を抜けない。
こんな映画があるなんて!
(リメイク版はどちらも未鑑賞)
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≪以下ネタバレあり≫
役者も良い。
ジョーを演じられたバネル氏が受賞されている。無一文なのに、大金持ち・権力者然とした登場した時のふるまい。採用されたスメルロフの代わりに現れた時の様子。何か大きなことをやらかしてくれるのではないかと思ってしまう。街では打つ手なしでくさっていたマリオが、ジョーについていけば何かできるのではと思ってしまうのも無理はない。だのに、出発時からの少しずつの怖気ぶり。それでも、まだ、報酬のおこぼれにあずかろうとしたり、とうとう逃げ出したりして、マリオに毒づかれ叱咤激励される。そんな老いて勢いが無くなってしまった様子が切ない。そして死に際。「あの壁の向こうには何があったのか」何度も訊くジョー。”壁”が、この抜け出せない環境ともリンクして、その”壁”の向こう≒本当なら希望を見出したいのに、”何もない”という答え。己の人生も”何もない”ようにも聞こえて、虚しさMAX。そして、死。死に際の表情と、死んだ後の表情の違い。生気の無い顔。こんな顔が演技でできるなんて。勿論メイクアップや、光の当て方で違うように見えたのだろうが。受賞もかくやと思う。
ビンバを演じられたアイク氏。ニトロで大岩を爆破するシーン。本当にニトロを扱っているようで、思わず手に汗握ってしまった。演技でそこまでの緊張感を醸し出せるなんて。
ルイージを演じられたルリ氏。余命宣告され、気分変えに行った先での出来事。そして導火線についた火を消しに行ってしまうなんて!コメディパート担当?人の好さがにじみ出る。
マリオを演じられたモンタン氏。歌手だと思っていたら、俳優もなさっていたとは知りませんでした。マリオとジョーが同郷人と気が付くきっかけが口笛と言うのが粋!時には危険を一人で回避する豪胆さもみせと、活躍される。ついていこうと思ったジョーに苛立ちながらも、ペアを継続。ジョーの最期に、自分の行き先を見たのか…。でも、そんな演技よりも、そのスタイルに目が行ってしまって…。足が長いというか、胴があんなに短い…。こんな方いるんだ…。
ちなみに、ラストのダンスでスメルロフ発見!ジョーはどうやってスメルロフと成り代わったのか?報酬折半?気絶させたか、寝坊させたか?そんな裏話を考えてしまうのも面白い。
そんな役者たちを際立たせる演出。ロケハン。セット。撮影。
特に、吊棚のシーンはどうやって撮ったのか。吊棚は二つ用意したのか。ルイージービンバ組の撮影だけでも、かなり痛むだろうに。その後にマリオージョー組の撮影。
トラック爆破のシーンを、煙草で見せるアイディア。目の前で爆発されるよりも印象に残る。
逆巻く油田火事。エキストラが巻き添えにならないか心配してしまった。
スリルの抜け方だけでなく、人間模様でも楽しめる。面白い映画です。