「人間を見事に描いたサスペンスアクションの名作」恐怖の報酬(1952) garuさんの映画レビュー(感想・評価)
人間を見事に描いたサスペンスアクションの名作
金のために命がけの仕事を引き受けた男たちの苦闘を描いた映画だが、 現代のサスペンスアクションとは種類が違う。
ストーリーは単純だ。 男たちが、トラックで液体爆弾を目的地まで運ぶという極めて危険な仕事を引き受けるところから始まる。 成功すれば大金が手に入るが、道中は危険な悪路ばかり。 ナビゲーターとドライバーは、互いに猜疑心を抱きながらも協力し、様々な危機を乗り越える。 そうした中で、二人の関係が変化していくのだが、 同時に運命のクライマックスも迫ってくる。
これが現代のサスペンスアクションなら、映像技術を駆使して危険な状況をリアルに映像化することに力点が置かれるだろう。 が、この作品が焦点を合わせているのは、状況ではなく人間そのものだ。 二人の心理的葛藤をドラマティックに演出し、それが見事に成功している。
その結果、観客は自然と二人の心に同調し、二人が直面する危機的な状況に同じ気持ちで立ち会うことになる。 だから、スリルや緊張感をより実感として体験してしまうのだ。 人によっては、焦りや絶望感や悲しみ、怒りの感情だけでなく、 体臭や乾いた砂、ぬかるみの感触、トラックの油の臭いまで体感してしまうかもしれない。
カンヌ映画祭でグランプリと男優賞を受賞しているが、文句なしに納得だ。 昭和6年生まれの母が、戦後に観たこの映画の面白さを繰り返し絶賛していたことを思い出す。
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