「共感できない?」早春 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
共感できない?
イエジー・スコリモフスキの映画の登場人物に関して、「共感できない」「見ていて苛つく」という感想が目に付き、そのことが作品そのものの評価になっている。非常に残念な映画体験である。
モノクロ時代の彼の作品「バリエラ」「出発」、監督作ではないが「水の中のナイフ」、近年の作品「イレヴンミニッツ」に登場する主な人物の誰に共感できるだろうか。共感できる者がいたとしたらスコリモフスキ自身が驚くのではないだろうか。
この作家の作品を観ていていつも感じるのが、バチバチと音を立てるかのようにすんなりとは脳に入ってこない映像である。カラー作品であれば色彩がその要因の一部をなすが、それはあくまで一つの要素に過ぎない。人物への反感など、様々な摩擦が自分の中で起き続け、ストレスなしには観ていられないのである。
よくもまあ、これだけ観客を突き放しにかかる映像をまとめ上げるものだと、そのひねくれぶりに感心させられるのだが、これがスコリモフスキの才能であろう。
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