チャルラータのレビュー・感想・評価
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ご無沙汰ジット・レイ
サタジット・レイの映画は随分前に6本ほど見ているが、久方ぶりの再会である。原作のタゴールは詩人のイメージが強かったので、こんな通俗的な小説を書いていたとは意外だった。
チャルラータがなぜ高等遊民のようなアマルに惹かれたのかがよくわからなかった。居候なのに何もせずぶらぶらしているだけで、かと言って遠慮する気配もない。チャルラータの想いは一方的に燃え上がっているだけで、アマルの方はさほどでもないようだ。チャルラータの感情の吐露は唐突で、相手は当惑するばかり。こうなると可哀想なのは夫で、妻の心変わりに怒るでもなく、ただひたすらむせび泣くという…。
ラストは和解と捉えることもできるのかもしれないが、新たな地獄の始まりにも見える。
ベンガル文字は美しい。ペンで綴られていくのを見ているだけで、ほれぼれする。
レイ以外のインド映画も最近いくつか見てきて、共通するのは女性の置かれた危うい地位という問題だ。
噂に違わぬ優美な傑作‼︎
1964年。サタジット・レイ監督。超深度の奥行きのある美しい画面で...
1964年。サタジット・レイ監督。超深度の奥行きのある美しい画面で描かれる、不倫未満の激しい思い。出だしの軽快な音楽と人物の動きの同調さ加減は小津安二郎かとおもうほど心地よいなあ、とおもっていると、画面の奥行きに圧倒されてぐいぐいひっぱられる。軽やかな関係が次第に真剣な想いになっていき、怒りにまで達する激しいものになっていく過程がすごい。19世紀末の女性の立場を考えれば、書くことをめぐる女性主人公の逡巡もわかるが、相手の男性への反発とも嫉妬とも愛情とも取れる負けん気を発揮して文芸賞に応募する(そしてなんなく掲載されてしまう)際の、思考中のドアップの額のあたりから二重に写される脳内映像がすばらしい。こんなにすごかった映画を実は一度見ていたのを忘れていたらしいのだが、今回は修復したということだから、インパクトがまったくちがったのだろうということで納得したい。とにかくすごいものを見た。
純文学の匂いがこの映像にはする。
向田邦子的
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