「お涙頂戴系ではない」ロレンツォのオイル 命の詩 いもりりさんの映画レビュー(感想・評価)
お涙頂戴系ではない
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愛する子どもが不治の病に…という話なので
純粋に泣けるかなと思って借りたのだけど、とても社会派な映画だった。
もちろん、人によっては泣ける映画でもあると思う。
ちなみにノンフィクションである。
医学的にマイナーな難病を発症した場合に起こる各種の問題について
非常に細やか、かつ真に迫った描写で問題提起している
具体的には、治療方法が確立していない難病について、
効果が不確実な治療をいわば人体実験的に行うことの是非、
医師でない者が治療方法を発見し、他人に実践させることの是非、
植物人間状態を維持するに留まる治療法を継続することの是非、
寝たきりの子を看護しなければならない家族の在り方、
などなどについて、各人の立場を十分に尊重したうえで説得的に描く。
常識的に考えれば、素人が勝手に編み出した治療法を、
世間に周知させて試させるなんてとんでもない話であるが、
この映画の場合は、そのままだと死を待つしかない状況において、
一般的な医師よりも知見がある素人が、
完全な善意で確立した、副作用がまず考えにくく、
金銭的な問題もほとんど生じない治療法である、
という特殊事情があるため本当に悩ましい。
30年前の映画であるが、治療法の発見から実施までの期間が長すぎるという問題は
未だに臨床医学の大きな課題である。
他の問題についても、現実に何らかの形で、患者やその家族のためになる制度の確立に
大なり小なり寄与する内容であり、本当の意味で意義深い作品だと思う。
ただ、真面目すぎる映画なせいか、面白さは感じにくい。
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