罠(1949)のレビュー・感想・評価
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『ロッキー』は“エイドリアン!”、こちらは“ジュリー!” ロバート・ワイズが切れの良い演出を見せるボクシング映画の佳作。
①劇中内における時間経過と上映時間の経過がほぼ同じの「リアルタイム劇」として製作されたとの事。ヒッチコックの『ロープ』(1948)、ジンネマンの『真昼の決闘』(1951)も同じく映画本編の時間経過=上映時間の映画だから、この頃(1950年前後)はこのタイプの実験映画がブームだったのかも。②先ずはストーカーの試合までの流れが良い。無駄なショットがなく且つ情報量は十分。演出のテンポは良く、控え室のシーンも様々なボクサー達の点描が面白い。③続いて本作のメイんイヴントであるストーカーの試合。ここでもカメラワークと編集とが見事。殴り合う二人のボクサーとリングサイドの観客とを交互に写しながら試合の緊迫感と臨場感とを盛り上げていく。数人の観客たち(映る度に違うものを食べたり飲んだりしているデブ、「ボクシングなんて野蛮だわ、誘われて来ているだけよ」と言いながら試合が始まると誰よりも熱くなるオバチャン、ボクシングの試合を見ながらラジオで野球の中継を聴いているオッサンとか)のおかしさも試合の緊張感を邪魔しない匙加減で挿入されていて映画が一本調子にならないように上手く工夫されている。④35歳とボクサーとしてはロートルになり連敗続きのストーカーが誇りと意地とを賭けて掴んだ勝利が思わぬ不幸を招いてしまうが、人生最後の試合で勝てたこと、ジュリーがやっと夫を支えながら夫婦二人二人三脚で生きて行けることになったこと(それまではもしストーカーが街から街へと流れていくボクサー人生を続ける様であれば真剣に離婚を考えていたと思う)とを考え会わせれば、アンハッビーがもたらしたハッピーエンドであろう。⑤ロバート・ライアンは背が高く渋くて男っぽい面構えのハンサムでなかなかカッコいい。
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