「究極的な哲学映画。」暴力脱獄 tさんの映画レビュー(感想・評価)
究極的な哲学映画。
暴力脱獄
DVDにて。伝説的な映画として有名な作品。あの有名な「ショーシャンクの空に」の元ネタ。伝説的な映画だと言われると期待しちゃうじゃん。期待外れるとガッカリするから観ることを躊躇っていましたが、酔った勢いで観ちゃった。
ショーシャンクはかなーり娯楽的な要素が強いので、ショーシャンクみたいなのを期待すると面食らうと思います。
暴力脱獄は完全に哲学映画でした。
刑務所が人間社会を徹底的に風刺していて、観てて暗く嫌な気持ちになり、GW明け会社に行きたくねーと思ってしまった笑
巷では、希望を持つことが大事とか諦めたら試合終了とか耐えたその先に勝利があるとかよく言いますよね。ショーシャンクでは、苦しいことに耐え脱獄したあとに良いことが待っていますし。。。
本作では、希望なんて幻想でしかない、諦めるもクソもない。だって最初からないんだもんそんなのwwwってことがハッキリと提示されます。ここまでストレート言わんだろ普通。鬼畜だわ。凄い。
でもこの映画は、希望がない中我々はどうすれば良いのか?ということも提示してくれます。
ここまでお節介な映画も珍しいです(笑)。という気がしました。
この映画は、正常な精神状態の時に観ると毒になり得る。が、病んだ精神状態の時に観ると薬になり得る。
明日に向かって撃て!繋がり。ポールニューマンの最高傑作は、問答無用で暴力脱獄。
主人公ルーク(ポールニューマン)は、人間にも自分にも完全に絶望し、世の中のルール、価値観に心底ウンザリしてしまった男。人間も世の中もクソだ。しかし、クソをクソだ!なんて、そんなこと分かり切ったことをいくら言ったところで無意味。自分自身の主張も思想もが何も無い男。もはや彼はずっと笑っているだけ。
ルークは、自分の居場所など、もうどこにも無いことなんて分かりきってる。塀の内も外も同じ。彼が脱獄を繰り返す理由は、逃げるためではない。俺の気持ちを少しで良いから分かって欲しい、という、彼に残された唯一の主張のためだ。。。と思う。
僕は、この映画は、ただ単に権力への反逆を描いたものには見えなかった。1960年代の人達にとっては、反逆の映画なのかな?僕はその世代ではないから、反逆してやる!って気持ちには全然ならないんだよね。
なんかこう、肩の荷を下ろせるというか、主張も伝統も社会も金も全部いらねー。人間にとっての唯一の救いは、人間同士が、互いの気持ちを分かり合おうとすることだけなんだなだと勉強させられた。
ルークはルーク教みたいな宗教を始めたら良いんじゃないかなw