北海の子
解説
「海の魂」「ボレロ」のジョージ・ラット、「暗黒街の弾痕」「丘の一本松」のヘンリー・フォンダ、「台風」「たくましき男」のドロシー・ラムーアが主演する映画で「海の魂」「丘の一本松」のヘンリー・ハサウェイが監督に当っている、バーレット・ウイロビーが書いたストーリーに基づき、「大自然の凱歌」「上海特急」のジュールス・ファースマンと「ロミオとジュリエット」「大地」のタルボット・ジェニングスとが協力脚色したもの。キャメラは「海の魂」「真珠の首飾」のチャールズ・ラングが擔当した。助演は「海賊(1938)」「将軍暁に死す」のエイキム・タミロフ、「ロミオとジュリエット」「君若き頃」のジョン・バリモア、新人ルイズ・ブラット、「女を捜せ」のリン・オヴアマン、「乙女の湖」「どん底」のウラジミル・ソコロフ、「トレイダ・ホーン(1931)」ダンカン・レナルド、「暗黒街の弾痕」のジョン・レイ等である。なお伴奏楽は「失われた地平線」のディミトリ・ティオムキンが作曲した。
1938年製作/アメリカ
原題または英題:Spawn of the North
ストーリー
鮭漁のシーズンが来て、アラスカの漁場が賑わい始める頃、海豹の密猟をしていたタイラー・ドースンはアラスカに帰って来て、親友のジム・ケマリーを仲間に入れようとするのだった。タイラーはアザラシ猟の船を手に入れ半額だけその代金を払ったが、地道に稼いだのでは容易に船が自分のものにならないので、ジムを仲間にして荒稼ぎしてやろうとした譯だ。しかし、ささやかながら缶詰工場を経営しているジムは、自分の漁場で真面目に働き、他の漁夫たちと一致団結して絶えず漁場を荒らす密漁者たちとあくまで戦うことを誓っていた。この港に一軒のホテルを営んでいる姐御のニッキイはタイラーに想いをかけていたがタイラーもジムも、ホテルの隣の新聞社の社長兼主筆のウインディの娘ダイアンを愛していた。ダイアンは鮭のシーズンが始まる前、アメリカでの大学教育を卒えて父の許に手伝いに来ていたのだった。ダイアンがニッキイにつきまとわれているタイラーよりも、真面目な働き者のジムを愛するようになったのは当たり前のことだった。ある日タイラーは通称レッドと呼ぶロシア人の密漁者の親分にそそのかされてレッドの仲間に加わった。彼は船を早く自分のものにしたさの一念から悪事の誘惑に負けたのである。ジムは親友からタイラーがレッドに加担したことを知り、何とかして彼を救おうと胸を痛めた。ジムの誕生日の晩、レッド一味がグリーン・ペアの網場を荒そうとしていることを予知した漁夫たちは、この機に彼ら一味を掃蕩するためにジムに応授を求めた。ジムはタイラーの身を案じ、ニッキイに頼んでその晩だけはタイラーを決して外へ出さぬようにしようとしたが、タイラーは引止めるニッキイの腕をふり切ってレッドの密漁に加った。網場では、不意を衝かれたレッド一味とジムたち漁夫仲間の間に猛烈な争闘が始まった。タイラーは捕鯨砲を用いてジムたちを悩ましたので、ジムは涙をのんでタイラーを射倒した。悪運強いレッドは身を以て逃れた。翌朝ジムは、レッドの巣窟で、重傷を負い人事不省になっているタイラーを発見して、ニッキイのホテルへ運び彼女に看護させた。レッドはジムたちを逆恨みしてジムを見つけ次第に殺すといきまいた。そして大胆にもホテルの酒場に現れてジムに挑戦したが、ジムは相手にならなかった。タイラーは臥床しながらレッドの面前でジムを罵倒し、友達を射つような奴は生かして置かぬ、決闘はレッドの介添えで海でしよう、と申し込んだ。翌日ジムは単身、タイラーはレッドと同乗し、2隻の船は氷河の湾へ向った。タイラーはジムの船が近づくのを見ると、欺いてレッドを船室に監禁し、氷河が決潰して落ちる氷壁に船を衝突させてレッドもろとも最後を遂げた。ジムはダイアンと結婚することとなった。ウインディは新聞に、悔悟したタイラーの立派な最期を賞賛した。しかし、ニッキイは波止場に出て生前タイラーが愛していたアザラシを傍らにいつまでも暮れゆく海を眺めていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ヘンリー・ハサウェイ
- 脚本
- ジュールス・ファースマン
- タルボット・ジェニングス
- 原作
- バーレット・ウィロビー
- 製作
- ヘンリー・ハサウェイ
- 撮影
- チャールズ・ラング
- 音楽
- ディミトリ・ティオムキン