都会の女
解説
F・W・ムルナウ氏のフォックス社に於ける最後の作品で「四人の悪魔」に次いで監督されたもの。エリオット・レスター氏作の舞台劇「泥亀」に基いて「四人の悪魔」と同じくベルトールド・フィアテル氏とマリオン・オース女史が共同脚色し、原作者レスター氏が台白を執筆した。キャメラ及びセットは共に「四人の悪魔」「河(1928)」のアーネスト・パーマー氏、ハリー・オリヴァー氏がそれぞれ担任している。発声版は前5巻が全伴奏附き後3巻が全発声となっている。主役は「幸運の星」「河(1928)」のチャールズ・ファーレル氏と「河(1928)」「四人の悪魔」のメアリー・ダンカン嬢で、助演俳優はデイヴィッド・トーレンス氏、エディス・ヨーク夫人、ドーン・オデイ嬢、マージョリー・ビーブ嬢、ディック・アレクサンダー氏等である。発声版8巻、無声版10巻。
1930年製作/90分/アメリカ
原題または英題:City Girl
ストーリー
米国中西部のミネソタ州で手びろく農業を営んでいるタスティンは息子のレムが1人前の立派な若者になったので収穫した小麦を売りにシカゴへ遣った。タスティンは生れがスコットランドだけに大変な倹約家だったので、レムは父親の言い値で小麦が売れればいいがと心配した。所がシカゴでは小麦は安値だった。レムは思い患いながら簡易食堂に昼飯を食べに入った。彼に給仕をしたのはケートという美しいウェイトレスでレムの純樸な気質を好ましく思った。レムもケートの美貌と親切とに大いに心を惹かれた。大都会の夏はさらぬだに暑いのに食堂で終日立働いて下宿へ帰るとケートは精も根も尽き果てたような心地がした。そして昼間会ったレムが住んでいるような田舎で一生暮らしたら何んなに暢気で気が清々することだろうと思うのだった。一方小麦は下る一方で何日になったら上るか見込は立たないのでレムは決心して売ってしまい1時の汽車で田舎へ帰るのだとケートに別れに行った。併しレムは1時の汽車には乗らなかった。そして再びケートを探しに戻ったレムと同じ思いで停車場へ行ったが行違って落胆して帰って来たケートは食堂の前で逢った。ウェイトレスと結婚した、帰りが遅れるが心配するな、という倅の電報を見た父親は暗い気持ちに襲われた。姑と小さい妹のメアリーには優しく迎えられたが舅の冷やかな態度はケートの心を重くした。然し彼女は姑を助けて甲斐甲斐しく働いた。多勢の雇人達も若い美しいケートの給仕に陽気になった。雇人頭のマックは主家の嫁に道ならぬ恋慕の炎を燃やした。その夜暴風雨来の警報を受けたタスティンは刈入れの夜業を命じた。マックは1人戻って来てケートに暴行を加えようとしたのを帰って来たタスティンに見咎められるとケートが仕かけた恋だと嘘吐いて逃げた。無情な舅はそれを信じてケートを撲った。そこへ戻ったレムは憤ってマックを探しに行き格闘の末引摺って来て事実を白状させた。豪雨が沛然と降り始めた。タスティンは収穫が駄目になると呻いた。来年の春を待ちましょう、皆で一生懸命に働きましょう、とケートが健気な言葉を吐いた時、タスティンは嫁を見損なった自らの不明を詫びた。希望と幸福に一同の顔は輝いた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- F・W・ムルナウ
- 脚色
- ベルトールド・フィルテル
- マリオン・オース
- 原作
- エリオット・レスター
- 台詞
- エリオット・レスター
- 撮影
- アーネスト・パーマー
- セット
- ハリー・オリバー
- 編集
- キャサリン・ヒリカー
- H・H・カルドウェル
- 題字
- キャサリン・ヒリカー
- H・H・カルドウェル