狂恋(1935)のレビュー・感想・評価
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女優に恋したマッドサイエンティストの悲哀。ピーター・ローレのハマり役!
ナイフ投げの達人である殺人犯の手を移植されたピアニストが、無性にナイフを投げて人を殺したくなるというアホネタに、常套的な「キングコング」「オペラ座の怪人」のフォーマット(優秀な非モテの怪物が美人女優に恋する)を掛け合わせた怪奇スリラー。
珍作ではあるが、一応古典としてある程度名の通った作品で、同じカメラマンということもあって、『市民ケーン』への影響関係を語る人もいるようだ。
とにかく、ピーター・ローレがハマり役。
彼の怪演ぶりを堪能するという意味では、これほど楽しい映画もない。
ただ、出だしから目の色変えて変態演技にフルスロットルなぶん、逆に映画がいかにもジャンル映画ぽいチープさを身にまとっているのも確か。
「腕を移植する」みたいなキワモノネタで勝負してる時点で、どうしたってジャンル映画感はぬぐえない。せめてマトモに見せようとリアリティの追求や抑制的な演出をやったところで、たかが知れてる。ならばいっそ、この映画ではグラン・ギニョル的な大仰さを敢えて究めて、怪演・珍演で名を残してみようか、みたいな居直りが随所に感じられる。
全体的にノリがガチャガチャしているうえ、コメディ要素なども無造作にぶっこんであって、作り手がB級であることを楽しんでいる気配がある。博士の計画についても、目的のブレとか、あまりの迂遠さとか、どうもシナリオ上突き詰められていない気配があるが、そこはあまり気にしても仕方がないいのだろう。
ピーター・ローレの異常人格演技と、蝋人形、食虫植物、オウム、その他、奇妙なオブジェの数々で彩られた博士の館のグラン・ギニョル趣味で、お腹はじゅうぶん満たされるので問題ない。
ちなみに、食虫植物サラセニアの捕虫葉の入り口の蓋は、あんなふうに虫を捕らえて閉まったりは絶対にしません(笑)。ほんと、どうでもいいところでコマ撮り撮影とかやってんのな。
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