エジプト人のレビュー・感想・評価
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この邦題じゃ興味をひかれない・・・
酒場の女メリト(シモンズ)はシヌヘに恋していたのだが、王室付の医師となった彼になかなか近づけない。そんなある日、シヌヘはバビロンの女ネルフェ(ベラ・ダルヴィ)に夢中になり、毎晩通い詰めていた。貢物は敢えて要求しないが、男どもはせっせと貢物を持ってくる。シヌヘもファラオからの頂ものを差出し、しまいに医療器具や養父母の家や墓の権利書まで手渡してしまう。友人ホレムヘブは自ら毒婦を手籠めにしてシヌヘを助けようとするも、恋は盲目というやつで友人とも仲たがい。ネルフェを殺そうとまでするが、結局は捨てられてしまう。さらに養父母は自殺。そのうち王母が病気だったのにシヌヘが王宮へ向かわなかったことで死去。シヌヘは死刑を宣告されていた・・・
10年間、片目の奴隷カプタとともに辺境を放浪していたシヌヘ。医者として金を稼ぎ、やがて鉄を発明したヒッタイトの王を治療し、エジプトを攻撃する意思を確認した。彼はエジプトに戻り、ファラオの許しを得て医師の仕事を再開する。そこへネルフェが重い病で訪れ、復讐心もなくなってしまった。メリトは未だ結婚せず、シヌヘの養父母の家を買い取り、医療器具も買い取っていた。そこでようやくメリトの愛に気付いたシヌヘ・・・
古代エジプト。キリスト誕生の13世紀も前の話。イクナートン=アメンホテプ4世は従来のエジプトの宗教を廃し、唯一神アテンのみを祀る世界初の一神教を始めた人物。シヌヘが戻ってくる頃には神官たちが従来の神を復活させようと、テーベでは内乱と混乱が渦巻いていた。やがて野心家のホレムヘブは不戦を誓うイクナートンを殺して自らがファラオになろうと計画。アテン信者の虐殺も起こり、そこでメリトは殺されてしまう。シヌヘが実はイクナートンの腹違いの兄弟だとか、妹バケタモン(ティアニー)の存在はどうも付け足し感溢れていて、盛り上がりに欠ける。ただ、メリトもネルフェも王家の名前として残っていることから、かなりの創作であり、後のツタンカーメン時代の繋ぎとして考えれば問題ないのかもしれない。。宗教的な転換期であったことは確かで、それを好戦的な人間と平和と慈悲を説くシヌヘと対照的に配置してあることが面白い。
波乱万丈の人間劇
総合:80点
ストーリー:85
キャスト:80
演出:75
ビジュアル:65
音楽:65
純粋に貧困層のために尽くそうとしたシヌヒが、悪女の虜になって身を崩して心に傷をおっていく様子が痛々しく、そんなになった彼にまだ無償の愛を注ぐメリトが心に響いた。その反動で変わっていくシヌヒと、それでも祖国を忘れられない郷愁の念を持ち、遂には王朝の動乱に関わっていく波乱万丈の物語は壮大だった。純粋から堕ちていって金満主義になり、またそこから信念を取り戻していく変遷が面白い。
野心を持ち有能な友人のホレムヒブや悪女のネフェルもいいのだが、片目の奴隷のカプターが特に気に入った。この嘘つきというか要領の良すぎるやつというか、どんな立場に追い込まれても都合のいい言葉が次々に出てくる交渉術のうまさには目を見張るものがある。それなのに最後まで主人には忠誠を尽くし最後まで裏切らない。彼の過去にはかなりの不幸もあっただろうに、それを表に出さず、主人の危機にもめげずに彼を助けて一緒に世界を放浪する。片目になった理由は次は何が出てくるのだろうかと期待させてくれた。
金をかけた様子はするのだが、多くは外ではなくスタジオで撮影したというのもわかってしまう。セットにいかにもな作り物感があった。古い映画だけあってこれは仕方がないだろうし、このあたりにはあまり多くを期待してはいけない。
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