「つまり、愛だ。」きいろいゾウ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
つまり、愛だ。
原作を知らないので、十分に理解できない場面は多いものの、
観終えて思うには、けっこう単純なテーマだったのかなと思う。
愛する人が自分の方を向いていないと感じる時って確かにある。
それが、すぐに解決できる場合と、そうでない場合。
単純に浮気問題とかそういうことでなく(過去に住みつくような)
言いようのない不安に自分がさいなまれた時。
冒頭からの幸せな風景と裏腹に、今作のツマが(背中を眺めながら)
抱えてきたものは大きかったんじゃないだろうか。
その日記と題された本に記される事柄は、一見普通の日記だと
思えるし、こちらから見ればムコは、常にツマのことを心配して、
よく気遣ってくれている優しい夫だと思うのだ。
それなのになんでツマは、ムコにああいう態度をとるのだ!?
…と、人物説明が為されない本作に於いて^^;戸惑ってしまった。
ファンタジーとしてほのぼのと見られる部分と、リアル面では
ダラダラと日常の機嫌と不機嫌が続く描写に、段々飽きてくる…
という感想が多いのも、あー分かるなぁという感じがする。
しかし後半、ムコの過去が露呈され、ムコに届いた手紙もあって、
この夫婦はどんどん口を利かなくなる。
もっぱら不機嫌になるのはツマの方だけど、ムコは身近な人の死と、
そこから引き戻される過去、向き合いたくないものを突きつけられて
どんどん不安定になっていき、不機嫌なツマを支えられなくなる。
(相談事にうわの空。ありますよねー!ありますよねー!これって)
この辺りから段々とツマの心情に添えるかたちになる。
過去には拘らない。なんてどう言ったってそんなのある訳がない。
まして自分が大好きな人間がだ、苦悩を抱えているのに気付かない、
そんなことあるワケないだろう。口に出すか出さないかの違いで、
本当は何もかも気付いているんだよ…勘でね(夫婦なんてもんはさ)
私など言いたいことをガンガン言わないと気が済まない性質だから
「黙って待っていられないのか」と常に反省しきりだけど、
ツマのように、肝心なことを言わないタイプ(気遣いでしょ、これは)
って案外いるんだなと思う。この夫婦の場合、ツマのほとんどを
ムコが理解できているから(健康面以外では)問題なかったのかな。
でもムコの本音や、心の叫びを、ツマはムコの身近なものに触れて、
一生懸命に確かめていたんだと思うよ。
寂しいから傍で寝たい。とか、いきなり車内で喚いてみたり。とか、
あれは何だったんだ?と思ったことが、後半でスーッと理解できた。
病弱で絵本がともだちだったツマ、駆け落ち?同然でムコと田舎へ
越してきて、ずっとこの人に添い遂げようと頑張ってる中、ムコは
(水道事件で手を怪我させたのに)東京へ行ってしまった。
ツマがソテツに寄り添い、必死にお月さまに願をかけるところには
ツマ役の宮崎あおいに感情移入して、ちょっと泣けてきてしまった。
「ムコさんを、返して下さい!」
ムコが東京へ行った理由はこちらは分かっているので、それが済んで
(リリー夫婦も哀しかった。でもすごかったね、奉仕が。愛が。)
ツマの元へ帰り、また日常が始まったことは良かった良かったと思う。
ムコのトラウマが消え、ツマに聞こえる動物の声も無くなった。
でもまたこの先、夫婦にはなんらかの不安要素が襲ってくるんだろう、
一つ一つ乗り越えて、また仲良し夫婦に戻って下さいな。
結局のところ、本当にその繰り返しなんですよ。夫婦なんてもんはさ。
(そして歳をとって、アレチさんとセイカさんになるわけなんだよね^^;)