「トランジットの不安」テイク・ディス・ワルツ arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
トランジットの不安
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マーゴがルーの髪や身体に触ったり、愛してるというのは、自分を彼の元に留めておくためのおまじないのようなもの。
彼女は“トランジット”が不安。
自分の心がルーから離れていってしまうのが怖い。“トランジット”の状態になってしまうのが。
でも、自分の心でさえ自分の思う通りにはならない。
もし、ダニエルがあんなに近くにいなければ、彼女のおまじないは効いたかもしれない。でも、彼はあまりにも近くにいた。
そして、ダニエルは彼女が自分の意思で彼を選ぶまで決して無理強いせずにじっと待っていた。
ルーの元から離れたマーゴに彼のアルコール依存症の姉ジェリーが言う。
「人生っていうのはどこか物足りなくて当然なの。抵抗するなんてバカみたい」
ダニエルと暮らすようになったマーゴ。
彼女はまたおまじないを始めていた。
ザ・バグルスの「ラジオスターの悲劇」は何度も聴いている筈なのに、こんなに切なく聴こえる曲だったとは。
満ち足りた時間なんて遊園地の乗り物のようにほんのつかの間でしかない。
それを象徴しているようで美しくも切ないラストシーンだった。
マーゴ役もこの作品自体もはM・ウィリアムズのイノセンスを感じさせる魅力なくして成立しなかったと思う。
違う女優、たとえ監督のサラ・ポーリーが演じたとしても、まったく違った作品になってしまったんじゃないかと思う。
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