グレート・ディベーター 栄光の教室のレビュー・感想・評価
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存在感のある歴史
1935年テキサス州マーシャルでの実話に基づいた話らしい。 この討論というのは米国社会では、特に高校生の間ではクラブもあるぐらいだから、かなり、広範囲にわたるアクティビティーであるらしい。しかし、この映画は長く続いた大恐慌の時代なのである。それも、テキサス。 実は30年ぐらい前、小学六年生の教科書の国語を担当していたとき、『討論』の授業をクラスでして、校長、教頭たちに見せなければならなかった。はっきり言って査定で、私の教授法を評価しにき たのだ。あの薄い教科書の2ページだけが討論について書いてあった。実は指導要綱だけでは討論を周りに説得させる設定をすることは無理だったろう。同僚の他の先生はこれを教えないと言った。私はパブリック・スピーキングや討論のクラスをとり、実際に壇上に立ったことがあったから、クラスを模擬討論にしてみせた。 ここ映画の討論の中で大切なのは引用である。 キリスト教の教会の偉大な教父のSt. Augustine of Hippo:不公平な法律は法律ではない "An unjust law is no law at all", (他にもあったが忘れてしまった)。この言葉の引用がハーバード大学での討論会で優勝できた理由なのだ。ジェームス・ファーマー(デンゼル・ウィテカー)はテキサス州から遠征に行った時、途中でみたリンチを経験にして最終弁論にした。ロゴス(論理)・パトス(感情)・エートス(人間性)のアリストテレスの修辞法はもっとも説得力があったわけだ。今だったら ロバート・ケネディやキング牧師の言葉を引用することができるが、1935年だから。著名人の数多くを私はよく知らない。 ジェームス・ファーマーは公民権運動家(co-found the Congress of Racial Equality)だが、この人とジェームスが同じだとは知らなかった。ワイリー大学(メソジスト、エピスコパル教会)の先生、メルビン ・トルソンMelvin B. Tolson (Denzel Washington) は討論のコーチだけでなく、詩人で人種を分断させない労働組合の先駆者だったんだね。最後の字幕がなるほどと納得させた。 ジム・クロウ法律の中、初めて北部のマサチュセツ州ボストンに降り立ち、ハーバードの学生の出迎えを待っている時、見たもの全て、そして、出迎えたハーバードの学生の態度からは今まで経験した白人の態度とはまるっきり違っていて、広い世界に飛び出たという気持ちになったろう。牧師の息子として育った黒人の特権階級の14歳のジェームスは何もしなくても、黒人であることがリンチされる理由になることも学び、これを最終弁論に持っていった。黒人と白人の討論会ではなく、ワイリー大学とハーバード大学(実際はUSC)の学生の討論会で、ジェームスの最終弁論でハーバード側の二人の学生は負けを感じ取った。 サマンサ・ブロック(ジャーニー・スモレット、実在の人物、Henrietta Bell Wells)だが、彼女も後世に名を残した公民権運動家で弁護士だそうだが、全く知らなかった。この時代に、彼女の存在は大きい。ハーバードの学生を見ればわかるが、白人の中にも女性を見かけなかった。 これらの人々の力によって、社会が変わっていった。社会の変化はゆっくりすぎるかもしれないが、誰も現状維持にとどまっていることは望まなかった。
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