ムーンライズ・キングダムのレビュー・感想・評価
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冗談みたいな子供の駆け落ちストーリーはちょっと甘酸っぱい秀作
とにかく映像とファッションが可愛い。最初のスージーが家から双眼鏡で遠くを見るシーンからすでにかわいすぎる。レトロな色調、レコードなどの小物、奥様は魔女のようなワンピース(僕が勝手に思っただけですが…)すべてがとても可愛い。
ボーイスカウトの服装や子供たちも非常に可愛かったです。
ストーリーの方は本当に悲しくも甘く、複雑な思いを起こさせるそんな感じでした。
里親に育てられ、愛情を感じられず、周囲とも反目しながら問題を起こし続けるサム。
サムにまったく関心を持たずたらいまわしにしていく周囲の大人たち。
サムのちょっとかわった性格からいじめに走るボーイスカウトの子供たち。
そんなサムに惹かれるスージー。
子供って残酷だし、大人ってもっと残酷だなぁと思ってしまいました。
でも、サムとスージーの甘酸っぱい逃避行はすごく素敵で、浜辺で踊る二人やディープなキス…ピアスの穴をあけてしまう偏狂的な愛情も、周囲の景色と相まって、ファンタジー感満載でとっても素敵でした。
二人の甘い時間は長くは続かず大人との最後の大とりもの。衝撃のラストは…笑えます。
映像の素晴らしさ、子供の純真無垢な(ちょっとおかしいけど…きらいじゃない)愛情がとってもほっこりする映画でした。
大人の為の絵本
風変わりな作品で知られるウェス・アンダーソン。
その極みとも言えるのが2001年の「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」だが、もう一本、新たな代表作が誕生した。
1960年代、ニューイングランドの小島で、ボーイスカウトの少年隊員が脱走。しかも、島に住む少女と駆け落ち! 大人を巻き込み、のどかな島は大騒動に…!
独特のアンダーソン・ワールドに、メルヘンの味わいがプラス。絵本のようなファンタジックな雰囲気。
美術も衣装も小道具もカラフルでポップ、画面の構図もユニーク。細部に至るまでアンダーソンのセンスを感じる。
アレクサンドル・デプラのリズミカルな音楽も心地良い。
駆け落ちする少年少女、サムとスージー。お互い問題児。
孤児のサムは里親にもボーイスカウト仲間にも嫌われ、スージーも家族に反抗してばかり。
この二人の“小さな恋のメロディ”はちょっと変わってるけど、とってもピュア。
そのピュアな姿にボーイスカウトの少年たちの心も動き、一度は連れ戻された二人を助ける。
それとは真逆に大人たちは、不倫していたり、しょぼくれていたり、頼りなさげだったり…滑稽で皮肉たっぷり。
この映画は、純粋な心を忘れた大人の為の絵本なのだ。
主役の二人の子役が見事。
サム役ジャレッド・ギルマンの何処にでも居るような眼鏡少年ぶりがイイ。
スージー役カーラ・ヘイワードはおませで小悪魔的な魅力を振り撒く。
周囲の大人たちに、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ハーヴェイ・カイテルら豪華キャスト。いずれも作品に溶け込んでいる好助演。特に、ウィリスはしょぼくれ警部役で新たな一面を見せ、役柄的にも美味しい。
キュートでハートフルでちょっとシビア。
クセになってしまいそう。
アンダーソン・ワールド、健在!
キュートな想いが胸を締め付けます。
正直に言うと、私には面白くありませんでした。
「エドワード・ノートンが好き」、との理由だけで鑑賞したのがいけなかったのかも知れません。
作品は、そこはかとなくオシャレな雰囲気があります。
時代背景や、ボーイスカウトを題材にした話は面白そうで興味を引きます。しかし、ユニークな演出が目に付いて仕方ありませんでした。
例えば、映像は俯瞰の構図を殆ど使わず、横からのショットをメインで物語が進行していきます。
まるで絵本や舞台劇を見ているかのような感覚を覚えます。
ですが、それはもう見る側の好みによって有りか無しかになるだけです。
好きな方にとっては良いかも知れませんが、私には「?」でした。
この監督さんの、いつもの手法なのでしょうか?
それとも、作品の芸術性の一環なのでしょうか?
全体に漂う印象を端的に説明すると、淡い恋…ノスタルジック…大人への階段…いやいや駄目です。
しっくり来る言葉が見いだせません。
やはり、私はこの作品を理解して楽しめていないです。
純真無垢な、子供時代に浸りたい方にオススメです。
必死の初恋物語、可愛くて切なくて
こだわりの整った映像、観終わってプチ贅沢した気分になれました。
いつも"家族“というものへの思いを再確認させてくれるウェス・アンダーソン監督作品。本作も良かったです。
狭い世界の中での、幼い二人の駆け落ち騒動。必死の初恋物語が可愛くて切なくて。
共同脚本のロマン・コッポラらしさが効いてるんでしょうか、ロマンティックでとても良かったです。
結婚て愛の成就だけじゃなく家族を作ることなんだよなぁ、じわっと温かい気持ちになったりして。
登場人物の渋い表情、わずかな揺らぎに心がギュッとつかまれます。主役の二人も、ボーイスカウトの仲間達も良かったです。
反逆児スージーちゃんを演じたカーラ・ヘイワード、終盤に向けてどんどんヒロインらしく輝いてました。
ブルース・ウィルス、フランシス・マクドーマンドは流石でした。
「小さな世界が大いなる世界への扉を開いたらどうなる?」
舞台感覚、箱庭的質感、スモールな世界で繰り広げられるスケール感の広い内容。
「小さな世界が大いなる世界への扉を開いたらどうなる?」という感じの、なんか、こう、寓話的というか。
うん、実に不思議で実に分かり易い(?)映画でした。
この映画を観た方なら分かると思うんですけど、全編に散りばめられてる技巧というか、ギミック?仕掛けというかね、相当量あるじゃないですか。その手法が映画の全体を占めてますよね。
で、そういうのって必然性があったの?なかったの?みたいなことを考えてしまうと、人によって意見は違うと思うんですけど、多分居らないんでしょうね。
でも、なんて云うかな。
居らないからこその必要性というか。
舞台装置といえばいいのか。
在るから楽しいというか。
この映画の主人公、サムとスージーのズレた者同士がお互いに感じたシンパシーは、きっとこういう奇妙な必然性から成り立ってる、みたいな?
んー…違いますねw
でもね、このサム&スージー。
最初の出会いから幾度となく交わされた文通によって、いつしか固く結ばれてしまった訳ですよ。愛の絆がね。もう離れられないというね。
何度行く手を阻まれようと誰も引き裂くことが出来ないぐらいに強固。
例えるなら、それはボニー&クライド、カート&コートニー、ジョン&ヨーコ、シド&ナンシー、佳祐&原坊、etc、etc…。
これこそ愛の逃避行。
この箱庭的空間は、彼らの小さな世界の縮図。そこをいつか突き破る。突き破ってみせる。まさに「小さな世界が大いなる世界への扉を開いたらどうなる?」という、メタ構造な訳ですよ(メタ構造って意味よく知らないで使いましたけど)。
そんな感じの映画でした。ハイ。
双眼鏡は魔法の窓♪
60年代のニューイングランド島で起こる、夏の事件の顛末。小さい島の小さい人間関係の中で、浮いちゃってる「脱退」スカウト少年と、同じく問題児扱いの少女。ふたりがとった行動は…。
覗いて観る手回しムービーかと思うようなキッチュな色合いが可愛いです。
脇を固める「大人」役の俳優陣がハマり役すぎて笑えます。
みんな不器用。そこがいいんです。
音楽の使われ方が面白いです。エンドロール始まってもすぐ帰らないで、ぜひ最後まで耳でも楽しんで下さい。
それにしてもニューイングランドって変なの(かなり好きなタイプですが)が定期的に登場する舞台のように思える…。
アンダーソン監督の作り上げた箱庭世界に、ビッグスターも楽しく溶け込んでいるのが凄い作品。
物語の舞台は1965年、米ニューイングランド沖の小さな島。ボーイスカウトのサムと家出をしたスージーは、秘密の場所を目指して駆け落ちします。大人たちを巻き込んで、島中の人々がふたりを捜しはじめるというのがメイン。
おかしいのにどこか切ないコメディを作り続けているウェス・アンダーソン監督作品。それだけに「小さな恋のメロディ」の変奏曲ともいえるような10代の男女の淡い恋の物語でも、アンダーソン監督の手にかかると、まるでお伽話の世界を覗いているかのようなメルヘンにしまいます。悪人なしで閉じる結末もじつに気持ちがいいし、そんなハートウォームな雰囲気を、出演者たち(実は、なにげにビッグスターが多数出演している)が童心に返って実に楽しそうに演じていて、見ている方も心地よくなります。
ともすれば、駆け落ちを巡るドタバタになり易いところを、ほどよくケレン味を押さえて、登場人物たちに感情移入してしまいやすい作品になりました。
最近こころがささくれている人にはぜひお勧めしたい作品です。きっと眠っていた豊かな情感がこみ上げてくることでしょう。
さて、お伽話みたいに見える仕掛けてとして、アンダーソン監督は様々な仕掛けが施されています。郷愁を誘う色調の映像、魅惑的な自然のロケーションもさることながら、人形の家のようなスージーの自宅、男の子的なものをぎゅっと集めたスカウトのキャンプ、つつましい島唯一の交番。次第に映画の舞台が箱庭みたいに見えてくるのです。
そして駆け落ちしたふたりが向かった小さな入江で、そこを「ムーンライズ・キングダム」と名づけ、愛の王国を営みはじめ場面は、まさに思春期のままごとの世界。初めてキスを交わすところや、スージーが胸を触らせようと導くところが、初々しいのです。
箱庭といってもチマチマしたものではありません。映画冒頭、耳に飛び込んでくるブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のように、一つ一つ緻密に計算された映像が積み重なって、アンダーソン監督ならではの叙情に満ちたアンサンブルを奏でるのでした。それだけ登場する少年少女たちののロマンチックでみずみずしい心情描写も素晴らしかったのです。
しかし、周囲が二人を放っておくはずはなく、島をめぐる大いなる追っかけの果て、「ムーンライズ・キングダム」は見つけられてしまい、ふたりは別々に。ところがここで見せる、サムのボーイスカウト仲間たちの友情が素晴らしい!あれほど嫌っていたサムだったのに、でもやっぱり仲間の窮状はほっとけないと一致団結し、サムとスージーを引き合わせて、再び駆け落ちさせるのでした。
ふたりの捜索網は拡大し、隣の島のボーイスカウト本部を巻き込んだ大掛かりなものとなります。そこへ嵐がやってきて、島全体がパニックに。ここからの逃走劇は、なかなかハラハラさせる冒険劇に変わっていきました。
追っ手が迫るなか、嵐の海に命懸けで飛び込もうとするふたりを、シャープ警部が自分を信じてと止めます。そしてサムに放ったひと言には、そこまでこの孤独な少年のことを思っていたのかと胸が熱くなりましたねぇ。さすが「ここ数年で一番の演技」とアメリカで評判になっただけのことはあります。駆け落ちの顛末も凄く後味のいいものでした。
さて、本作はエドワード・ノートンが、あり得ないような冴えないボーイスカウト隊長を演じていたり、なかなか本人と気付かないほどイメチェンしてシャープ警部を演じたブルース・ウィリスが出ていたりと、さりげなく大物が出演しています。けれども彼等は個性を主張せず、アンダーソン監督の作り上げた世界に強調しているところが見事でした。それでいて、トップスターならでは演技力が物語にぐっと効いているのです。
2時間のお伽話は、短編に思えるほどあっと終わり、あれよという間にエンディングクレジットを迎えます。このエンディングロールは、なかなかデザインと音楽に凝っているのでた最後までお見逃しなく!
シュールな屋外学芸会。
好みでいうと、ハッキリ好き嫌いの分かれる作品だと思う。
可愛い!面白い!って人もいれば、これの?どこが?って人も。
しかしこの監督の作品が公開されれば、何かと話題になるのは、
やっぱり好きな人が多いってことなのかしら~。
あれ?今回O・ウィルソンが出てないぞ…ってチト心配しながら、
ハイハイ、J・シュワルツマンさん。いつもありがとうございます。
B・マーレイも、歳とったなぁ…(当たり前か)なんて思いつつ、
おかしなダンスを披露するかと思ったら、今回はそれはナシ。
奥さん役マクドーマンド、福祉局員役のスウィントンもなかなか。
けっこう似合ってる?と思ったのが、ダメダメ隊長E・ノートンで
いつか見限られるんだろうな~と思ったら、本当にそうなった^^;
B・ウィリス、何やってんの?こんなとこで~?と思わせるほど
ダイ・ハードじゃない(運は悪い)役柄を本人が楽しそうに演じてる。
なんだか、俳優達が狭い狭い島で、内輪だけのキャンプを拓いて、
ワイワイ楽しくやってるだけのような、まったくせせこましいお話。
小さなおじさん?と、熟女?みたいな少年少女を主人公に据えて
彼らに駆け落ちというオトナの逃避行を味わってもらうスタイル。
およそ可愛い?とは言い難い風貌の、とても大人びたお二人。
いちいち交わされるシュールな会話に、お見通しか?と思わせる
的確な説明表現。いくら時代が1965年といっても、日本人の子供
達にゃ、あんな表現は絶対できないぞ。悪寒がするほど薄笑い~。
劇場前方席で、どこかのオバさんが大声でケラッケラッ笑っていて、
この世界に声をあげて楽しめる妙な勇気に乾杯&脱帽した。
ありそうにない世界観の中で、あり得ない事件が起きているため、
島内の皆さんがドタバタやってても、観ているこっちはゼンゼン
心配の種はない。まさか行方不明~とんでもないことにはならない
だろうと思いつつ、でも、天候悪化はマズいぞ…なんて少し心配。
しかしまぁどの場面であっても、色鮮やかなドールハウス?の中
という気がして、まったくリアル恐怖が感じられない(そこが狙い?)
高度な技術を用いた屋外学芸会。のノリで、
スクリーンが舞台のように使われている。最後にみんなで揃って
カーテンコールでもやってくれない?なんて思ってしまったほどだ。
一同が会したチラシの記念写真?が彼らのすべてを物語っている。
(ナレーターのB・バラバンみたいなおじさん、お人形で売ってるね)
大人の絵本
小さな島で12歳の少年少女が駆け落ちする。逃げるといっても子供だけで島からは出られないので、いずれ見つけられて捕まるのは分かりきっている。
この映画では、身の回りで一般常識を破る者が現れた場合、周囲の人間がどう振る舞うのかを描写する。
はじめは迷惑なヤツらだと思っていた人々も、小さな二人を温かく見守りはじめる。60年代の、人々が助け合って生きてきたよき時代を、軟らかな色調とともに想起させる。
いじめっ子も大人も、誰もが手を差し伸べる。
そこに嫌味な上官や福祉局員といったちょいワルを登場させ、ところどころマンガチックなカットを挿絵風に挿入して、子どもが主人公ながら、大人が責任ある大人に成長していく大人のためのファンタジーに仕上がっている。
だから大人たちのキャスティングが贅沢なのだ。
60年代といいながらも、現代でも話が受け入れやすいように、もしかしたらそんな人と人が温かく繋がった生活が残っていそうなと思わせる小島を舞台に選んだのがよかった。
気象観測者みたいなのがナレーターを務め、いっそう絵日記風な色合いを醸し出している。
アーティスティック
好きです。こういう映画。
アーティスティックで60年代チックな色彩でツボです。
スクリーンで観る不思議なカラーが印象に残ってて魅力満載。
豪華キャストが揃う中、がんばった少年少女がメインの映画で見ごたえたっぷり。
サムを演じた男の子は主役級に光ってたしスージーを演じた女の子もキュートでした。
驚いたのがこのサムとスージーを演じたふたりは本作がデビュー作らしい!
他にも子役の男の子たちが出てくるんですがなかなかで可愛かった。
猫も犬も登場して釘付けです。
愛や恋を描くのは年齢なんて関係ないと思った。
とっても一途でピュアで行動力があってどこが懐かしさを感じられて・・・
大冒険がキーワードで観ててハラハラドキドキします。
ふたりだけの場所を目指す姿に自分自身を重ねてしまう瞬間がありました(笑)
そこはしゃれた入江でその名前がタイトルにもなったそれで素敵でした。
キラキラした気持ちが伝わってくる可愛らしい映画で好きです。
ウェス・アンダーソン監督のセンスに感動しました。
この映画の雰囲気や色など どことなく中島哲也監督が好みそうなテイストでした(笑)
ブルース・ウィルスもちょっぴり抜けた役(笑)きっと珍しいポジションかも。
とにかくサムとスージーの恋の行方が気になる映画です。
不思議な感覚の映画でした。
シュールで完璧な心温まるコメディ
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」を見てからというもの、ウェス・アンダーソンはお気に入りの監督の1人となったが、今回もその期待を裏切らない。
ストーリーは至ってシンプルだ。周囲の人間から問題児とみなされている少年少女が駆け落ちをする。ただこれだけのことを描いている。強いて言うならテーマは「愛」かもしれないが、この映画にそれを求めるのは陳腐というものだ。「ファンタスティック Mr.Fox」と同様に、純粋に映画を楽しむことが目的なのである。
しかしその一見単純なストーリーもアンダーソンらしく一筋縄ではいかない。突っ込みどころ満載で、限りなくシュールなその世界観は誰にでもまねできる物ではない。そこに洗練された様式美(少々スタイリッシュすぎるきらいもあるが)が加われば、唯一無二の「ウェス・アンダーソン映画」の出来上がりだ。
彼の映画すべてに言えることだが、俳優陣が見事だからこそ物語も引き立つのである。主演の2人、ジャレッド・ギルマンとカーラ・ヘイワードは、大人びているのに子供らしさを残したまま演技を見せている。少しクールすぎて感情移入するのは難しいかもしれないが、どことなく暗いトーンが漂う映画の雰囲気は彼らが作り出している。
そして彼らの脇を固める大人たちは文句なしの配役だ。ここ最近は目立たなかったエドワード・ノートンも、今回は彼が得意とする役柄の1人「情けないけど愛すべき男」に完璧になりきっている。狂気をはらんだ役柄も良いが、いつもしょぼくれて眉が垂れ下がっているウォード隊長もなかなかのものだ。
フランシス・マクドーマンド、ビル・マーレイもさほど出番は無いが、どちらもそれぞれが最も得意とする役を見事に演じきった。マクドーマンドは娘役のヘイワードと、ブルース・ウィリスとの会話で見せる、威厳と哀しみの入り交じった表情が絶品だ。ビル・マーレイは相変わらず「笑わない演技」で笑わせてくれる。普段は無気力な目つきでいるのに、突然怒り狂ったりする様子は本当に面白い。もう少し台詞があっても良かったのでは。
もう1人忘れてはならないのが、ブルース・ウィリスだ。普段のマッチョな役柄ではなく、いつも悲しそうで、騒々しい面子に振り回される島の保安官を繊細に演じた。彼とジャレッドの会話のシーンは笑いがこみ上げると同時に哀愁も誘う。彼の過去に何があったのかは明かされないが、それでもこの映画の中で一番観客が入り込める役柄ではある。それまでの細やかな演技があったから、最後のシーンで彼が発する言葉には感動させられる。そしてジョン・マクレーンよりもかっこいい。
独特のカメラワークやレトロな質感、随所に流れるセンスのいい音楽。どこを取っても完璧で、忘れがたい。言葉で表すよりも実際に見た方が早いだろう。今年度最高の一本は、見る者を絶対に満足させてくれるだろう。
(2013年2月11日鑑賞)
いつしか失われたキングダム
『天才マックスの世界』『ロイヤル・テネンバウムス』など、
ヘンな映画を撮るウェス・アンダーソン監督の最新作。
今回もやっぱりヘンな映画でした(褒めてます)。
漫画かポップアートのように鮮やかな色彩と几帳面な配置。
絵画を切り取るかのようにスルスルカチリと動くカメラ。
やけにシンメトリー(左右対称)を多用する画作りが印象的だ。
そして、奇妙なものの数々。
危険高度のツリーハウス、カヌーの先のアライグマ人形、甲虫のイヤリング、
矢の刺さった犬、きつねやカラスの被り物、謎の赤服おじさん(笑)。
管弦楽の構造を解説する奇妙なBGMや60年代らしいサイケな音楽なども含め、
隅から隅までシュールでキュート。
映像や音楽がヘンなら当然、登場人物たちもヘンです。
浮気相手に靴を投げ付けたり、子どもに失恋を慰められたり、
スカウト隊隊長という“副業”に気合を入れまくっていたり、
なんだか子ども達より子どもじみた大人達(名優達が見事なまでに情けない(笑))。
それに対し、なんだか大人達より大人びた子ども達。
サムとスージーがスカウト隊に囲まれるシーンでは
まるでアクション大作みたいなテンションの子ども達にクスクス。
スージーの前でキャンプの知識を披露したがるサムの姿も可愛らしい(案外頼りがいもある)。
後半、スカウト隊で行った“式”のシーンも、子どもなりにだが真剣そのもの。
そう。くすくす笑いながら観ていたけれど、子どもは子どもなりに、物凄く真剣に生きている。
世界に味方がいないのなら尚更だ。
彼らにとっての“世界”はまだ全長26kmの小島でしかないが、
その小さな世界を、小さな体に持てるだけの精一杯の真剣さで戦っている。
あの保安官達のような、情熱を忘れて日々の生活にくたびれ切った大人だからこそ、
真っ直ぐな情熱で突き進むあの2人に味方したくなったのかも知れない。
あのラストはハッピーエンドと捉えて良いのだろう。けれど僕の場合、
『このひたむきな情熱も、大人になれば失われてしまうのかしら』
と考えた途端、なぜだか少しだけ泣きたくなった。
嵐で失われた王国が、あの2人の記憶に刻まれたのと同じく、
子ども達がいつまでも真っ直ぐな気持ちを持ち続けていられますように。
ふわふわとしていて少しだけノスタルジックな、童話のような映画。
それにしても、あの千里眼の赤服おじさんは結局何者だったんだ(笑)。
<2013/2/8鑑賞>
シュールな絵本を映画に
これぞまさにアメリカ映画
ウェスワールドは健在
12歳の少年、少女の駆け落ちに大興奮っ!
とってもアートな作品
アメリカ映画
監督:ウェス アンダーソン
脚本:ロマン コッポラ
音楽:ベンジャミン ブリテン
キャスト
保安官シャープ :ブルース ウィルス
スージー :カラ ヘイワード
サム :ジャード ギルマン
スカウトマスター:エドワード ノートン
スージーの父 :ビル マーフィー
スージーの母 :フランシス マクドナルド
ストーリーは
1965年夏、ニューイングランド島。
夏の間、ボーイスカウトが ニューイングランド島で、キャンプをしている。スカウトマスターの指導の下、キャンプ内での規律はとても厳しい。食事、炊飯、野外活動、就寝、すべてが時間どうりに 秩序正しく行われなければならない。
ある日、サムと言う少年は、地元の学校の生徒達が教会で「ノアの箱舟」の劇を演じているのを見て、ひとりの少女に恋をした。少女の名前はスージー(カラ ヘイワード)。
サム(ジャード ギルマン)とスージーは 示し合わせて、計画したとおりに駆け落ちをする。サムはテント1式を背負い、空気銃も担ぎ、スージーはスーツケースに愛読書をつめて、ふたりの逃走劇がはじまる。
12歳の少女の失踪で、普段は眠ったような、静かな田舎町は大騒ぎ。少女の両親はあわてふためき、ボーイスカウトのキャンプも大慌て。12歳のサムは 孤児だったので、養父母の育てられていたが、これを機会に、養父母は、サムの引取りを拒否。サムが見つかり次第、孤児院に送られることになった。スージーの両親の要請を受けて、保安官のシャープ(ブルース ウィルス)は 何としても二人の身柄を確保しなければならなくなった。
一方、恋する二人、12歳の道行きは、きわめて順調。二人して手に手をとってボートでムーンライズ キングダム岬に渡って、海辺にテントを張り、サムは魚を仕留めて料理して、スージーは毎晩、サムに本を読んできかせる。二人して仲良く 眺めの良い海辺で過ごしていた。しかし、大型台風がやってきて、、、。
というお話。
映画のストーリーや、キャストや、ドラマがどうこう言うような映画ではなくて、映画そのものがアート作品。ふつうの映画ではない。非現実的なフェアリーテールでもある。
例えば、教会の尖塔で 恋する二人を保安官が引き戻そうとしているところで、雷の音がした、と思った次の場面で、折れた教会の塔に片手で保安官が捕まっていて、その片手にサムが、またその片手にスージーがぶら下がっている絵のようなシーンがある。
あるいは、ボーイスカウトのマスターが居住する小屋は 50メートルもある高い木のトップにのっかっている。そのくせ中では揺れもしない。物理学的にも、建築上も、土木工学的にも、ありえない小屋なのだ。
カメラは正面から写していて動かない。画面が平面的で奥行きがない。ボーイスカウトの小さなテントが沢山並んでいるが、そこに一人が入るシーンがある。次のシーンはテントの中だが、これが驚くほど広くて整然としている。距離感とか、奥行きの 普通の感覚が覆される。
ブルース ウィルスの演じる保安官のキャラクターガ生きている。二人が捕られる。娘と引き離されたサムに、保安官が朝食を作ってやっている。すっかりしょげているサムに、どうだ、あの浜辺では楽しかったか?と聞く。いいなあ、あの浜辺。俺に彼女がいたら、絶対あの浜辺に連れて行ってやっただろうと思うよ。と、実に共感をもって語り、サムを一人前の男として扱っている。
登場する大人たちが、みな、スージーの両親も含めて、どこかずれている。大真面目だが、ずれている様子が とてもおかしい。
サムが獲物を捕まえ、解体して 火をおこし料理する。スージーが食べ終わると、サムが眠るまで、本を読んで聞かせる。テープレコーダーの曲に合わせて、砂浜で踊ったり、手を繋いだり、泳いだり、ちょっとキスしたりする。ひょうひょうとした眼鏡の少年が、頼りなげに見え、危なっかしくて仕方無いのだが、見ている側は、笑いをこらえて見守っている。
駆け落ちという深刻なできごとを 駆け落ちにはちょっと早すぎる二人が気軽にヒョイとやってしまい それに混乱して上や下やの大騒ぎに巻き込まれる大人たちが笑える。
音楽が良い。ベンジャミン ブリテンの「真夏の夜の夢」や、「ノアの箱舟」などからもってきた音楽が 画面の芸術性や、とっ拍子のない筋書きによくマッチしている。
大人でもない、子供でもない、テイーンでもない、スージーとサムの危なっかしい愛の行方に、ハラハラしながら、笑いをこらえながら見ている誰もが いつしか二人の見方になっていて、二人がどんなことになっても守ってやりたい、と思うだろう。
子供だったとき、人を好きになって、それがどんなに純粋で真剣だったかを思い出して 胸が痛くなる人もいるかもしれない。
とても楽しい、ロマンテイックコメデイー。
全80件中、61~80件目を表示