劇場公開日 2013年9月7日

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「成功と苦悩のバランスがもっと拮抗していれば」大統領の料理人 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5成功と苦悩のバランスがもっと拮抗していれば

2013年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

クレジットでは大統領としか書かれていないが、フランソワ・ミッテラン大統領(任期:1981-1995)と官邸史上唯一の女性料理人ダニエル・デルプシュがモデル。

美食家の大統領に請われて南西部の片田舎からパリに出てくる料理人オルタンスを演じるカトリーヌ・フロが魅力的。知的でプライドがあり、新参者に冷たい主厨房の男たちを相手に奮闘し、創意工夫を重ねていくオルタンスにぴったりだ。

フォアグラとトリュフが好きなようだが、料理はいたってシンプルで家庭料理の延長のようなものばかり。これがどれも美味しそうで、色味も鮮やかだ。
とくに、キャベツとサーモンを交互に重ねて調理したファルスという料理の切り口がなんとも美味そうで、スクリーンに手を伸ばしたくなる。

これで、規律や伝統を重んじるエリゼ宮の官僚や、男社会の厨房を相手に、オルタンスが孤立と絶望感を深めていく様子がもう少し丁寧に描かれていたら、ドラマに深みが出たことだろう。
ユーモアのある台詞やカットが楽しいので、エリゼ宮に新風を吹き込み思い通りに振る舞った女性の成功談という印象が強い。彼女が大統領に宛てて手紙を書くに至る苦悩の部分が弱く、演出のバランスが偏ってしまったのが惜しい。

マスター@だんだん