劇場公開日 2012年12月22日

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「分子料理??」シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ kenMaxさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0分子料理??

2015年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

フランスで名を知らぬ者はいない有名3ツ星シェフが窮地に陥った時、シェフ経験も無い素人料理人と遭遇!
はたして有名シェフは新境地を開拓できるか、素人料理人は憧れのシェフとなれるのか。
という映画です。

内容は完全にコメディ寄りですので、フランス料理に付きものの堅苦しい雰囲気はほとんどありません。
レストランもお客さんが入るエリアは豪華で伝統と品格を感じさせますが、
主に厨房での出来事がメインなので、肩肘張った感じで観る必要もありません。

主演の2人はコメディにとても良く合っていました。組み合わせという点でも良かったと思います。
2人のしゃべり方や身長などの体格、年齢、映画業界においてのポジションなどを考えても、今回の作品に合っていたと思います。
ある種の新旧対決を作品としても俳優としても描いているように見えます。

ストーリーは結構単純です。特に捻りらしい捻りも無いのですが、フランス的に言う"ユーモア"というものを感じられる作品です。
主演2人の他に老人ホームで出会った料理人3人が出てくるのですが、そのやり取りはなかなか面白いです。
わざと国籍(見た目)の違う3人を入れることで、良いアクセントになっています。
もしかすると、料理という面でもフランスの伝統だけに囚われない新しい視点や発想などを表現しているのかも知れません。
フランス料理というと味だけが全面に出ていますが、実際はビジネスという面も大きく、そういった葛藤も描かれています。
長年3ツ星を守ってきたシェフとしては譲れない信念がありますが、それを今の客が求めているかどうかは別の話といった感じです。

自分に代わって3ツ星レストランのシェフになるかもしれない相手の店に偵察に行くシーンがありますが、
良い意味なのか悪い意味なのか、爆笑の日本人風の主演2人が見れますw
私は良い方に捕らえました。
作中、シェフの自宅のシーンがありますが、そこにも扇子だか屏風だか日本のものがありました。
悪い意味だったらそんな所に日本をイメージさせる小道具は使わないと思いますし、
偵察のシーンが結構長いので、まぁ悪意は無いと思っていますw
日本料理の繊細さがフランス料理の拘りと似ている部分があると考えたのかもしれません。

偵察する店は"分子料理"という耳慣れない料理を出します(私は知りませんでした)。
少し調べましたが、どうやら料理を科学的に突き詰めていく"分子調理法"というものを用いた料理のようです。
全てデータ化し、分子レベルで解析を行い、視覚・嗅覚・味覚レベルで探求していくようで、
フランスの一流店でも人気の調理法となっています。
作中でもフラスコやスポイト、液体窒素の霧を表現していますが、現実でも似たような感じみたいです。
主人公が自分の作った試作品を食べながら「感動が無い」という台詞がありますが、
皮肉にも"分子料理(分子調理法)"ほど感動や驚きを得られる調理法は無いかもしれません。

そういった意味で、この作品は分子調理に対するアンチテーゼとも言えます。
見た目や味を奇抜に変化させた驚きではなく、既存のスタイルでも天才的な閃きを持つ一流のシェフ達なら
それ以上の感動を与えられる。それこそがフランス料理の3ツ星シェフなのだという自負の念を描いています。
私は分子料理を食べた事が無いので、味についてや関係性などは詳しくは分かりませんが。

全体的にはコメディですが、フランス料理業界の現実や現状を上手く取り入れた作品です。
単純に笑える作品として観るのも良いですし、料理業界の成り行きを見つめるのも良いです。
ラストは意外な発表と、気持ちの良い屋外の風景の中で織り成す、微笑ましいコントが観れます。

kenMax