劇場公開日 2012年7月21日

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「邦題に騙された」ローマ法王の休日 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0邦題に騙された

2012年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

「ローマ法王の休日」、なんとものんびりした洒落たタイトルではないか。
自分の置かれた立場を放り出して雲隠れしてしまった「ローマの休日」を彷彿とさせる予告篇と相まって、ハートフル・コメディを連想してしまう。

つまり、意に反して法王になってしまった枢機卿メルヴィルが、集まった信者への就任演説をボイコットして街に逃げ出してしまうが、いろんな人達との触れ合いを通して自らの立場を踏まえて帰ってくるという内容だと思ったのだ。
まさに「ローマの休日」のヴァチカン版だ。
そう思いこんだのは、こっちのミスだろうか?
いや、タイトル、予告篇、チラシの「神さま、ごめんなさい。少しお暇を頂きます。」といったキャプション、そのすべてが確信犯的に観客に誤解を抱かせている。
だとすれば、なんともったいないことだろう。
この作品には、それなりの良さがあるのだ。
ところが、想像とあまりにも違った内容にがっかりさせられるのだ。

どちらにせよ、街に飛び出したメルヴィルの心の葛藤を描いてこそ、ラストが際立つのだが、104分という尺の中でヴァチカンに残った人々を捉えた比率が大きすぎる。
なんのことはない、監督(精神科医役で出演)がいちばん多く写っている。
暇を持て余した枢機卿たちが賭け事をし、神にすがるよりも強力な精神安定剤に頼る挿話は笑えるが、メルヴィルが法王という職責に対して、また自身の生き方に対してどう向き合ったのか、肝心なところが希薄だ。

これはコメディでもなんでもない。
自分が法王という重い職責を背負いたくない人たちが寄ってたかって一番弱い人間に職責を押し付けた。いわばいじめともとれる行動で、その彼らが無責任な人選をした報いを受ける。そういう話だ。

自分としては明るい結末にして欲しかった。
なぜならそういう期待を抱かされて観に行ったからだ。

マスター@だんだん