劇場公開日 2012年6月23日

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「家族が頼れなかったからビーバーに頼った」それでも、愛してる いずるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5家族が頼れなかったからビーバーに頼った

2013年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

全体的に照明は暗く、薄寒い雰囲気が漂っています。
明るい意味を持つシーンでも、病的な雰囲気に見える。
青が強い画面。

主人公はゴミ捨て場でビーバーの人形を拾います。彼は、ビーバーに依存するしかなかった。
だって家族は大鬱病をわずらう主人公の世話に飽きてしまって、
家族まで憂鬱になってしまったので『だったら部屋を分けましょう、住む所を分けましょう』ってんで別居します。見放されたようなものです。
別居先に移った主人公は、自殺未遂を繰り返して酒におぼれる。
見放された自分に絶望して、ぼろぼろになって泣きながら。
家族にはもう頼れない、と実感した主人公はひとつの光明を見つけ出します。それがビーバーです。
『人と会話する際にはビーバーを通す』と決めます。腹話術師のように常に人形を帯同する。ビーバーという薄い膜を自分の周りに張りました。社会と直接接しなくてもよくなった主人公は、すこし気が楽になります。ビーバーはとても役に立ち、鬱病になる前のように明るく人と話すことが出来るようになった。ビーバーによって元気になったのです。

ここまでなら、まるでおとぎ話のようですね。しかし、それでハッピーエンドとはいかなかった。
ぬいぐるみに依存する大人は周囲から当然ですが、奇異の眼で見られる。元気になった主人公に喜んでいた妻も、『ビーバーを捨ててほしい』と願います。家族が望むならば……と一端主人公はビーバーと離れようとするのですが……
しかし、ビーバーが突然反抗!まるでビーバーは意志を持った別の人格のように主人公をなじる。
「自分一人で生きていくことが出来るのか?」と。
どうやってもビーバーと離れられない。ビーバーと不可分になっていた主人公は、ついに決断。身を持ってビーバーを切り捨てる。
ビーバーに依存させたのは家族なのに、家族の願いからビーバーを捨てさせる。
う~んこの畜生。

いずる