「このラストに救われます!」それでも、愛してる Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
このラストに救われます!
こんな撮り方が有るのだ!特にテクニカルで珍しい撮影方法では無いのだが、それでいてこの鬱病になってしまったウォルターのこの表情をパっと見せつけるのにとても印象的で、深く脳裏に焼き付くファーストシーンが巧いと感じた!
そして、またラストシーンの終わり方がしんみりと静かに幕を引くようで、感動的で良い映画だった。
ただ、邦題がこの『それでも、愛してる』と言うのが、何か感じが悪いのだ。
あたかも、病気で苦しみ病んでいる家族の一員を愛する事がその家族にとっては特別な事でも有る様な印象を受ける。
「病気なのに、それでも私達は、この病人を愛しています!」と声高に偉そうに主張しているイメージが付きまとって、このタイトルでは、いささか不利な気がしたのだが?どうなのだろうか?
精神を病んでしまう病気の場合は、治療時間をとても長く必要とする事に加え、その患者の本当の苦しみが家族であっても、病気の当事者ではなく、他者であるために、その苦しみを理解する事が困難な事が多い。
その為に尚更、病人と家族の溝は深く大きく広がって行ってしまうのだ。
理屈では分かっていても、お互い非情な疲労過多に陥り苦しむ事になる。そしてその事に対してお互い罪悪感をも抱くようになって行くので、八方塞がりとは、こう言う患者と暮す人々との生活環境を言うのだろうとつくづくこの作品を観て思うのだ。
メル・ギブソン演じるウォルターは自分の本心を打ち明けられない苦しみをビバー人形を借りて、腹話術の様にして人形の口を借りて少しずつ自分の本心を話していくのだが、これを理解して容認して行く事が、更なる困難を生んで行く。
過去を捨て去り、本音で再出発を望むウォルターと、過去の元気で楽しかった日々を取り戻したいと願う妻メレディスの真逆な気持ちの行き違いを繊細に描き出していくのだ。
そしてまた長男のポーターを演じるアントン・イエルチンが丁度ティーンの反抗期と合い間って多感な年頃の姿を見事に演じている。そして彼の彼女を演じているのが、「ハンガーゲーム」に抜擢されたジェニファー・ローレンスだが、彼女の熱演も見所の一つであるし、
次男を「一枚のめぐり逢い」での名子役のR・トーマス・スチュワートがまたしても最高の芝居をご披露してくれるのだ。
思えば、この作品の監督であるジョディー・フォスターも名子役でありました!
この人は非常に生真面目で、努力家であり、その才能は小さな彼女の全身から滲み溢れ出しているのだが、それだけにエキセントリックに成り過ぎてしまう気がしなくもない!少しばかり、話しが堅過ぎて疲れて来る気がしないでもないのだが、こうしてこの作品を観てみると、やはり家族には、助けられ、家族とは非常に有り難い存在である事を再度、実感させられるのだ。貴方も家族と鍋でも囲んで楽しく観られると良いかもしれません!!
何時の日か必ずお互いを理解し合えると言う希望が持てる秀作だ!