「団体鑑賞される男。」王になった男 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
団体鑑賞される男。
実在した朝鮮王朝15代目の王・光海君をモデルに、
その影武者となった男の闘いをフィクションで描いている。
さすが韓流大河ドラマ、主演イ・ビョンホンということで、
劇場ロビーからすでにオバさまとオバアさまの軍団が占拠!
最近あまりビョンホン映画を観ていなかった気がするので、
懐かしい~なんて思いながら、まるで団体鑑賞のように入場。
こういった影武者映画は最近でもけっこう作られている。
面白いパロディものから、恐ろしいテロリスト系まで様々。
1人の俳優が別人を演じるのだから確かに難しい点が多く、
俳優の真価(言いすぎ?)が問われると思うが、
そこは安定したビョンホン、さすがの演技力でしっかり魅せる。
実際の王は暴君(昔は良王、今は暗殺の恐怖に脅えて)であり、
道化師ハソンが宮廷お笑い芸として披露するのを、たまたま
見かけた王の側近ホ・ギュンによって宮廷内に雇われる。
まずはお勉強、という手順から王の日常を学んでいく光景が
非常に愉快で、世話係のチョ内官も身分を知り温かく見守る。
奇しくもそんな中、王が謎の毒病に倒れ、遂に影武者ハソンが
その本分以上を発揮する日がやってくるのだが…。
物語はやがてどうなるか、の定石を崩しておらず予測通り。
なので他の作品と比べて突き抜けた部分はないものの、
いかにも庶民の考えそうな発想や意見と、王政ならではの
立場や決定権の、ありとあらゆる食い違いが非常に面白い。
側近とのやりとりが愉快であり厳しくもあり、頷ける部分が
多いのに感心し、王妃ですら後半まで影武者とは気付かず、
王が良い方向に変わったという評判はすこぶる調子がいい。
ところが宮廷内政策での不協和音は広がるばかり。
「のぼうの城」でも庶民の生活を一番に考え、民の為に戦った
城主がいかに民衆に愛されたかを説いていたが、あれと同じ。
何のための王朝であり、誰のための政治であるかを
非常に分かり易い平民語(爆)で、切々と説くのには感動する。
同時に、でもそれ難しいよね。とこちら側も理解できるのだ。
後半のクライマックス、どうなるのかはだいたい察しがつくが、
ここでタイトルの意味をしっかり思い知ることになる。
「王になった男」とは巧いタイトルだな、とつくづく思わせる
単なる影武者にこんなことができただろうかと考えさせられる。
韓国も日本も真のリーダーを心から待ち望んでる今だからね。
(鑑賞後のオバ談義が通路でロビーで大炸裂。さすが団体鑑賞)