「本物の隊員たち」ネイビーシールズ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
本物の隊員たち
現役シールズ隊員を使って撮った、今どきめずらしい本物の銃を使った映画。
原題の『Act of Valor』は勇敢な行動の意味。
【ストーリー】
インドネシアのジャカルタで、子供を巻き込んだテロが発生する。
実行犯はアブ・シャバール。
アメリカに殺意を向ける、イスラム原理派テロリストだった。
直後、医療スタッフとしてコスタリカに潜入していたCIAの現地エージェントが誘拐され、ネイビー・シールズ、チーム7(太平洋担当)のローク小隊が投入される。
負傷者を出しつつも救出に成功したが、彼女の口から思いもよらぬテロ支援者の名が告げられる。
男の名はクリスト。
麻薬と密輸で大金を稼ぐ、南米の大物だった。
クリストはシャバールと同郷で、彼の活動を支援しつづけていたのだ。
CIAの手が伸びることを察知して、及び腰になるクリストだが、シャバールは彼を脅して協力させる。
用意された自爆ベストは、金属探知機にもかからない、恐るべきテロ兵器。
彼らはメキシコ国境から地下道を通ってアメリカ全土で自爆テロを敢行するつもりだったのだ。
洋上で休暇を楽しむクリストを急襲し、その全容を知ったロークたちは、アメリカ本土に潜入するためにメキシコ国境へと向かったシャバールと自爆テロリストたちを追うーー
『本物の兵器、本物の戦術』が売りの本作。
実は近年の映画は、撮影用のプロップガンという弾の出ないモデルガンで撮られています。
かつては実銃に弾頭のない空実包を装填して撮られていたのですが、取り扱いミスほかで実弾が発射され、ブルース・リーの息子ブランドン・リーをはじめとする犠牲者がつづいたために実銃を使わないようになったそうです。
撮影当初はローク小隊のメンバーもプロップガンを使っていたのですが、扱いづらくて逆に危ないと自分の銃を使用することにしたそうです。
「映画への出演に魅力を覚えなかった。別に有名になりたくないし」
と出演を渋るシールズ隊員たちを、米海軍が口説き落としての企画。
秘密作戦に従事する特殊部隊員のメンタルを感じます。
海軍完全協力の元、彼ら愛用の銃器や、追いすがる敵を蹴ちらすSWCCボート部隊 のGAU-17機関砲とM2重機関銃、クリストを追いつめる高速艇やシーホーク(ヘリ)、強襲揚陸艦ポノム・リシャール(名前がかわいい)、そしてオハイオ級原子力潜水艦とMK8潜水艇などなど、この予算ではあり得ないほどの兵器がたくさん出てきます。
しかも全部本物で、敵のピックアップを鉄クズにするのも実弾。
隊員たちの動きや銃の扱いも本当に手慣れていて、上体をピタリと止めてライフルを構えながら滑るように移動する様は相当なフィジカルと訓練量がうかがえます。
「もう二度と、こんな映画は撮れないだろう」
出演の隊員たちがそう言うほど海軍の核心戦力が登場し、潜水艦のシーンを見たアメリカの議員から「おいこれ軍事機密じゃないの? こんなの公開していいのか?」とお叱りをいただいたほど。
予算といえば、一番予算がかかったシーンはクリスト尋問だそうです。
あのおひげのシニア・ミラーも本物で、「本当の尋問ぽくやっちゃって!」という演技の要請に、ガチ尋問をかましたそうです。
クリスト役の役者さん、本気でびびっていたとか。
本当に迫力のシーンでしたが、その時汚した高級クルーザーの内装の修繕費がすごくかかったそうで、製作メンバーも請求書を目の当たりにしてさぞ怯えた事でしょう。