「卵の中身は、割ってみないとわからない」天使のたまご かぼにゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
卵の中身は、割ってみないとわからない
押井守監督の舞台挨拶付き上映で鑑賞。
長年観たかった作品が、4Kリマスター版で映画館の大画面で観られるとあって、良い時代になったなと。
この作品で3年干された監督が、腐らず(拗らせはしたかも)廃業せず今も監督業を続けていてくれることに感謝。
天野喜孝の繊細な絵をセルの線画でアニメーションにしようとするなんて、ほとんど狂気としか思えないけれど、セルアニメ全盛期の、しかも超絶職人技保持者による贅沢な映像作品だった。
少女の髪や戦車などの描写についてはよく記事などで読んだけど、“魚”を捕らえようとする男たちの作画も震えが来るほど素晴らしかった。
背景のニュアンスや、水や水草の表現力も、それだけ抜き出してエンドレスで見ていたいほど。
これを、全部、手で描いたんだ、と改めて驚く。
登場人物は少女と少年の二人だけでナレーションも無く、ストーリーの説明が一切無いから観客を選びまくるけど、その分没入感はすごい。
あの世界だからこそ、置いてけぼりにされることで没入できる。
没入感とは、画面の中からこちらに働きかけること以外でも得られるものなのだ。
所々に、後々監督が自作に取り入れることになる表現が見つけられて、監督自身のこの作品に対して抱き続けている感情が読み取れるような気がする。
発売(当初はOVA作品として販売だけで劇場公開はされてない)当時は全く売れなかった、というのは、当時はアニメーション視聴世代の年齢層が今よりも低かったのもあるだろう。
観客それぞれが自分で積み重ねた各種視聴体験や鑑賞体験が、4Kリマスターとドルビーアトモス&5.1チャンネルサラウンドで鮮明に表示できるようになった映像技術と併せて、40年経った今ようやく作品に追い付いたのか。
そう考えると、この作品そのものが『卵』だったのかもしれない。
卵の中身は、割ってみないとわからないよ。
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