MY HOUSEのレビュー・感想・評価
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名古屋ロケ
あの、堤幸彦監督作。不安でいっぱいだけど、 これが堤監督の撮りたかった作品、という事で、 今までの映画はやらされてました、て告白しちゃってる作品。 全編モノクロで台詞も殆ど無く、登場人物も少ない。 ホームレスの鈴さんを軸に、 その対局として中学生ショータは優等生、 その母トモコは夫が医者で極度の潔癖症。 関わりがない、としてるが関わりはあって、 トモコの出すゴミを鈴さんが毎日受け取っていた。 その事実をショータがあるきっかけで知り、 更に内緒で買っていたカメを父に殺され、 ショータが暴走し始める。 ホームレスの視点から、都会というものは、街の幸の宝庫であり、 「働く所も、住む所もあるぞ」と誘われても拒否したのは、 家も仕事も無くても生きていけるし楽だ、という事。 そのホームレスを目の当たりにする、 ガリ勉中学生のショータからすると、 こっちは朝から晩まで親や先生の為に勉強させられてるのに、 何の努力もしないで他人のゴミを漁って生きてるなんて、 しかも視界に入ればこちらが不愉快に感じるなんて、 僕の死んだカメは僕に癒しをくれたのに、 てめーらはカメ以下なんだから殺されて当然だ!、 てな感じだろうか。 生きる事を強要されてる中学生と、 生きるために必死なホームレスとでは、 全く相容れないから最後はあーゆーことになるんでしょう。 視点は面白い。でも結論がぼんやりしてる。 トモコやショータの妹も、もっと日常を描いて欲しかった。 堤作品としては意外な作品でした。 見る価値はあると思います。 全編、名古屋ロケなのがよく分かります。 科学館の前通ったり、ラブホテルは今池だったり、 ホームレスの住処は小幡緑地らしいです。
宿無しが現実に問う幸福の在処について
『トリック』や『20世紀少年』etc.クダけた笑いを散りばめた従来のエンターテイメント路線とは一線を画す異様な世界観に戸惑いつつ、新たな堤ワールドの境地に引き込まれてしまった。 人生を完全に諦めた世捨て人ながらも、主人公は家庭ゴミを汚くあさり、むさぼる輩を軽蔑し、嫌う。 街中を周り、アルミ缶や廃品をたくさん回収して、“自給自足”を徹する。 換金した稼ぎでなるべく一般人には迷惑をかけず、真っ当に暮らす。でも、絶対働かないぞというホームレスの美学を貫いているのが、彼の誇るべき人生論であり、やがて悲劇にも繋がってしまう。 使用済みの道具をいかに効率良く、大量に手に入れかが死活問題である以上、分配してくれるシャバの連中との協力が必要不可欠だからである。 僅かな救いから芽生えた接点が、差別という歪みが広がり、痛々しい虐待へと突き進む。 そんなやり場のない破壊へのプロセスを、潔癖症の主婦やエリート進学塾に通い詰める中学生etc.ホームレスとは全く無関係であるハズの人々が格差を生んだまま併走し、両者を凄惨なる運命へ静かに結びつけていく。 人生の坂道を登る者もいれば、降りる者もいる。 転がり落ちる者もいれば、へばって塞ぎ込む者もいるし、中には坂道さえ見つけられない人もいる。 でも、今の暮らしを維持するため必死に這いつくばって前へ前へと進もうとする。 それが社会人として当たり前の姿やと思う。 しかし、ふと足を止めた時、 「坂道の向こうに本当の自由や幸福が果たしてアンタを待っていてくれるのかい?」 と、世間の虚無を悪びれる事もなく問う人々がいる。 それが“我が家”の無い彼らなのだ。 観終わった後、なぜか罪悪感で心がチクチク痛くて仕方なかった。 それは、幸福とは何か?の答えを彼の孤高に乞うていたからなのかもしれない。 では、最後に短歌を一首 『宿無しや 揺れて這いずり 街の隅 廃れて集う 灰の坂道』 by全竜
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