劇場公開日 2005年12月17日

「BJ&キリコの異色タッグvs悪魔の細菌」ブラック・ジャック ふたりの黒い医者 ぽちょむ禁さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5BJ&キリコの異色タッグvs悪魔の細菌

2024年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

泣ける

興奮

幸せ

BJとキリコの信条の異なる二人のアウトロー医師が製薬会社とテロリストの暗闘に巻き込まれつつ悪魔の細菌「サタン」の謎に挑み、その陰謀と真実に迫る物語。
コロナ禍を経たいまとなってはその予見めいたところなどひときわ感じ入るものがあります。
公開はコロナ禍を遡ること15年、感染率死亡率の高い新種の細菌なんて幾多の伝染病を克服した日本ではフィクションに感じられた時代だったなあとなんとも言えない気持ちに…
いくつかの原作エピと人気キャラをピックアップし大きなドラマへと再構成してあり原作ファンにとってはそのあたりも楽しみどころ。
なお孤島の秘密施設が舞台なのは原作「恐怖菌」通り。。。

作品を見てどのような感想を持つのかは十人十色だし自由ではあるとは思いますが
公の場で評点を入れるのであればおおよその人間が納得する物差しを持っていてほしいもの。
不当に低い評点になっているので見かねた部分もありましたが、
BJの声は大塚明夫さんでハマり役と思いますし(ヤングBJから入った層には違和感?)
今では不可能なレジェンド声優の共演も見どころで、水谷優子、野沢那智、小林清志、富田耕生、内海賢二…そして音楽の冨田勲…(敬称略)綺羅星のごとき顔ぶれが揃った最後期の作品ではということだけで十分満点に値します。
ただそういった熟練陣の中では熱演ではあったものの作品のキーマン、ロックを演じた石垣佑磨(のちの二代目ギャバン)、その恋人役の平山あやがキャリアの浅さゆえ浮いてしまっていたきらいはあったかも…ここでやや減点。
ここは無難に人気イケボアイドル声優でも配役しておけばよかったかもですが劇場版ということで営業サイドやタレント事務所の謎の力がかかったのでしょうね…
ただキリコを演じた鹿賀丈史、ゴア社長を演じた大和田伸也は俳優畑とはいえさすがの馴染具合でキャリアの幅を感じました。
…でも贅沢を言えばゴアは大平透さんなら完璧だったかも…ですがタイミング的にお仕事を減らされた時期のようだったのがやや残念…

声ばかりを評価するようなレビューになってしまいましたが、複数エピソードを90分でコンパクトに纏めつつ各キャラにきちんと見どころを用意する手腕はさすが手塚眞監督、原作者である父君のいわんとした作品のテーマもきっちりと押さえた構成です。
作画も熟練の杉野昭夫とあって隙がない。手塚タッチを再現しつつ要所要所で杉野演出が冴え渡ります。

構成上で必要なアレンジ以外原作の持ち味やキャラを損なうような手を加えていないのも大事なところですが、ふと思うのは手塚治虫先生存命だったら、大胆なアレンジやオリジナル要素を加えつつ原作を長編にリファインした(のび太の恐竜のような)作品を自ら陣頭に立って作っていたのかもなぁなどとも夢想したり…

ぽちょむ禁