「あまりのヘタさに笑ってしまう濡れ場」ヘルタースケルター マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
あまりのヘタさに笑ってしまう濡れ場
芸能プロダクションがスターの卵を見分ける基準はなんだろうと考えたとき、それは顔とかスタイルとは限らないのではないか。見えるものではなく、内面の輝くもの、あるいは飽くなき闘争心に目をつけるのではないだろうか。芸能プロの仕事とは、卵となる人間の本質を導き出し、内面にある輝きを引き出すことだと思う。
スターは創りだすもの、この作品からは、そういう一面が見て取れる。
何度も何度も出てくる、りりこの部屋。その開け放たれたままの扉の向こうに見えるのは、現実と夢が渾然とした虚構の世界だ。
1枚1枚の画からは、そう窺える。
けれども、それらが紡がれて動画となったとき、映画としての魅力は乏しい。
だいたい、こんな色気のない桃井かおりと寺島しのぶを見たのは初めてだ。桃井かおりのねっとりと肌に絡みつくような色気や、素朴さの中にそこはかとない色気を醸し出す寺島しのぶはどこへ行ってしまったのだろう。
男女の絡みも、沢尻エリカは喘ぎ声をあげるだけ、窪塚洋介もヘタクソなAV男優のようで、濡れ場の“ぬ”の字もない。「さくらん」から進歩がなく、蜷川実花監督に色事は向いていそうにない。「さくらん」は沢尻エリカと違って自分をプロデュースできる土屋アンナが主役を張っていたから見られたのだ。
そして、途中からは某大型店とのタイアップをもろに見せられたような気分になり白けてしまう。
ファッション系のコマーシャル・フォトとして見たら、主演の沢尻エリカよりも「ノルウェイの森」でも瑞々しさを放っていた水原希子のほうが魅力的だ。
この作品の内容に触れたテキストを見ると、『(ある事件を巻き起こし)芸能界を、東京を、日本中を、スキャンダラスに、めちゃくちゃに疾走する。』とあるが、観終わってみれば、そんな大層なことはない。
まだ続くのかと、のらりくらりと引き伸ばされた終盤は、まるで歯切れが悪い。その割には、タダでは起きない女のしたたかさが出たラストシーンはよかったが・・・。