「キャラクターは期待通りでした」シン・エヴァンゲリオン劇場版 trasanさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターは期待通りでした
ストーリーを軸としてみるか、キャラクターを描き切る作品としてみるかで見方や評価は分かれる。
視聴後ストーリーが物足りなく感じるのは、少なくとも本作はキャラクターを丁寧になぞった作品だからかな。それだけ見る側もキャラクターの理解が深まっているのだろう。
サードインパクト後の村の世界と、シンジの長い塞ぎ込みは、各キャラクターを描く為の単なる舞台装置に感じてしまった。
綾波が人の生活や人間の暖かさにに触れていくシーンは良かった。何もない部屋で無感情に暮らす綾波も、人の優しさに触れ自然に微笑む綾波も、周りの環境が違うと、きっとこういう子になるだろうと。紛れもなく綾波として受け入れられた。少しの間だけど、人間の暖かさに触れ、心としては報われて良かった。
アスカは、ウンダーに乗ってた時とは打って変わり、正面きっての過激なツンデレぶりが復活。シンジの反応の悪さや、良いところを綾波に持ってかれる報われなさも久しぶりだなぁ。イライラ暴力的だが、やってる事はやさしい。ゆっくりそう言ったシーンが見れて良かった。一歩進んでアスカとシンジの関係性やお互いの気持ちも、すれ違わずにちゃんと話ができた。精神的には少しだけど報われたのかな。(アスカのストーリー上の扱いは酷いけど)
ゲンドウの妻と会うため世界を変えてしまう考えを、前からエヴァを見てる人は知っているし驚きがないのは、ずいぶんエヴァに染まってるなぁって思った。ゲンドウの心情が丁寧になぞられていた。
シンジに対してATフィールドが発動したのにはちょっとドキッとしたかな。自分も父親なので。
唯一最後まで深堀りされないキャラ(名前すら思い出せない)と一緒になるのは、必然性は感じないが、困ったことに全く悪い気がしない。
付き合ってるって言う1つの事実で、シンジが幸せになったという説得力を持たせ、物語を心地よく帰着させている。(この手法は反則かも)
全体として作品に一切の悪意は感じられず、視聴者を縛り付け引っ張り回す意図もなく。気持ち良く解放してくれる作品でした。