「反転して反転して反転したその先に…」サカサマのパテマ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
反転して反転して反転したその先に…
異世界の冒険ファンタジーと少年少女の淡い恋という、「ラピュタ」的な王道物語なのだが、何とも不思議な世界観のアニメーション映画。
地下世界の少女パテマは、ある日、立ち入り禁止区域の縦穴に落ちてしまう。その先は、空のある地上世界、パテマにとって上下サカサマの世界だった。そこでパテマは少年エイジと出会い…。
身分違いはよくあるが、本作は重力違い。
パテマにしてみればエイジがサカサマで、エイジにしてみればパテマがサカサマ。
時折映像も上下サカサマになり、あれ、どっちがどっちだっけ?…と頭の中がくるくるするが(笑)、まずこのユニークな世界観に惹かれる。
かつて重力からエネルギーを得ようとするも失敗、重力が反転し、人々は地下に潜った。
一方、重力の反転から逃れた人々は地上世界で絶対君主による管理社会を形成、空とサカサマ世界の人々への嫌悪を叩き込まれる。
重力も立場も違う世界の少年少女が出会って、物語が始まる。
二人には数奇な縁が。
パテマの憧れの探検家ラゴスと、空への挑戦中に事故死したエイジの父。
この二人に導かれるようにして、パテマとエイジは出会う。
パテマとラゴスは禁止されている地上世界へ興味を抱き、エイジと父は禁止されている空への憧れを抱く。
異世界同士の出会い、“落ちる”かもしれない一歩を踏み出した時、二つの世界が大きく変わり始める…。
“空”がキーとなっているだけに、青く広がる(パテマにとっては底無しの)空の映像が美しい。
キャラクターでは、エイジはちと無個性だが(そういう設定なのだけど)、天真爛漫で好奇心旺盛でその合間に弱さと芯の強さを見せるパテマがキュートだ。
こういう作品は悪役が必須。地上の管理社会アイガの独裁者イザムラが、稀に見る超ヤな奴!(笑) ベテラン声優・土師孝也氏の怪演もハマってる。
吉浦康裕監督の名は覚えておいて損は無い。
「イヴの時間」も見なくては!
ついでに、まさかのネタ被り「アップサイドダウン 重力の恋人」も見ておこう。