「私たちは悪い人間じゃない。悪い場所に居ただけ」SHAME シェイム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
私たちは悪い人間じゃない。悪い場所に居ただけ
先日発表されたオスカーノミネートで話題の「それでも夜は明ける」のスティーヴ・マックイーン監督&マイケル・ファスベンダーのコンビ作。
SEX依存症の男の苦悩を描く。
題材から濃厚なエロスを期待すると肩透かしを食らう。
作風は何処までもドライで、際どい描写はあるものの、さほどエロスは感じられない。
冒頭、電車の中で絡み合う視線の方がよほどエロスを感じる。
マイケル・ファスベンダーがダンディさと翳りを感じさせる演技で魅せる。過激な題材、際どい役柄に挑んだ役者魂は賞賛に値する。
物語に絡んでくるのが、ファスベンダー演じる主人公の妹。恋愛依存症で腕にリストカットの跡が多々。
可憐なイメージのキャリー・マリガンがヌードも厭わない熱演。甘い歌声も披露。(このシーンは必見!)
SEX依存症と恋愛依存症。
依存症は現代病、都会病と言うべきか。
ひょんな事から一緒に暮らす事になった兄妹。
支え合う優しい話などではない。
共に孤独を抱える二人、衝突し合い、さらに孤独の深みに堕ちていく。
先にも述べたようにドライな作風の為、なかなか感情移入し難く、見る者を寄せ付けないが、キャリー演じる妹の台詞…
「私たちは悪い人間じゃない。ただ悪い場所に居ただけ」
…が、胸に突き刺さる。
孤独な現代人の悲しみと心の内を痛切に浮き彫りにする。
依存症に続き奴隷問題…一筋縄ではいかない題材で、スティーヴ・マックイーンは“人間”に深く迫る。
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