劇場公開日 2012年3月10日

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「「私たちは悪い人間じゃないわ」」SHAME シェイム マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「私たちは悪い人間じゃないわ」

2012年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

誰にも自分の性癖を知られたくないが、TPOに関係なく性的衝動を覚えてしまうブランドンは、真に人を愛することを知らず孤独な人生を歩む。
コミュニケーション不全で孤独を愛し、人の人生に入り込むことをも恐れる。行きずりや金銭を介しての交渉は厭(いと)わないが、相手の人生を背負わなければならない可能性を感じるとデキなくなってしまう。

愛に関係なく、まるで日々の義務でもあるかのように性行動を続けるブラントン。もはや快楽というより苦しみに喘ぎ、精神だけではなく肉体をも蝕んでいくようだ。

その虚しさは彼自身がいちばん知っている。
妹・シシーの歌“NewYork,NewYork”を聴いて涙するブランドンが印象的だ。
キャリー・マリガンが歌うこのシーンは素晴らしい。フランク・シナトラの歌声で代表されるように、ミュージカル調の高らかなイメージしかなかった曲だが、こんなジーンとくる“NewYork,NewYork”もあるのだと聴き入ってしまう。

大好きな俳優と同姓同名でややこしいが、マックイーン監督は都会のなかの孤独感を、一見、オープンなようで冷たいガラス張りのマンションやホテルを使って表現。無機質なオフィスや、度々出る地下鉄もまた孤独感を増す。

地下鉄といえば、あの《地下鉄の女》の変化が気に掛かる。最初と最後の間に、彼女なりの目醒があったのだろう。最初のほうが好みだが・・・。

人生にはソレしかないかのように性的な行動に没頭してしまうブランドン。彼は異常なのだろうか?
人間社会が創り上げた“モラル”からは外れている。社会の一員として生きていくためには、“モラル”を守る必要がある。だが、彼の性癖は誰にも迷惑を掛けてはいない。常識ぶった目で彼を見る方こそ異常かもしれないのだ。

妹・シシーが言う。
「私たちは悪い人間じゃないわ」
「いた場所が悪いのよ」

マスター@だんだん