劇場公開日 2012年3月10日

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「性依存は不潔なのだろうか」SHAME シェイム f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5性依存は不潔なのだろうか

2019年2月27日
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難しい

兄と妹の過去に何があったのだろうか......それはさておき。

主人公はセックス依存症だ。そんな彼を,周囲の人間は「不潔だ」「不道徳だ」と咎めるかもしれない。けれど彼は誰に迷惑をかけているわけでもない。というのも彼のSEXの相手は,性を売り物にしている女性か,SEXを求めている女性に限定されているからである。別に誰かを傷つけているわけでも裏切っているわけでもない。誰かに性暴力を振るっているわけでもないし,浮気をしているわけでもない。つまり嫌がる相手とはSEXしないのである。一般的に,ある男性が恋人や妻といったパートナーとセックスをしたかったとしても,相手がその気でないことがある。そんなときに無理やり行為をしては,相手を傷つけてしまうことがある。そんな可能性を主人公は排除しているのである。(性を売り物にしないと生きていけないような女性とSEXしているとしたら女性の社会的地位向上の阻害を助長していないか?という経済と絡んだ話題は置いておく。映画の主題はそこには置かれていないから)
彼のPCの検索履歴を見た同僚(上司)は偉そうに説教をするけれども,そういう自分は妻帯者でありながらナンパはするわ主人公の妹と寝るわ,それでいて平気で自分の子供とSkypeしながら家族思いを気取るのである。この同僚は「一般常識的な道徳を持ち,SEX好きに対して説教するけれども,自分の頭の上のハチを追うべき」人間として,主人公と対比させられている。
主人公は主人公なりに「女性の意に反するSEXはしない」というルールを一貫して守っているように思う。

(もう1人,主人公と対比させられているのが妹。主人公は恋愛はせずセックスだけする。それに対して妹は恋愛依存気味で,自分の存在意義を恋愛に求めているかのように思える。彼女は恋愛で傷つく。)

主人公はいざ恋愛の相手と寝るとなるとセックスができない(なぜかEDになる)
つまり女性を恋愛の相手とみなした時は性欲の対象と見ることができないし,性欲の対象とみなした時は恋愛ができない。つまり恋愛とセックスを切り離してしまっているのだと思う。そうすることによって彼が守ることができるのは,「女性の意に反するSEXはしない」というルールである。
彼がこのルールを守るに至るまでに,どのような経験をしたのだろうか?この疑問を,「彼と妹の過去に何があったのか?」という疑問と結びつけ,同時に解消するような仮説を立てることはできるだろうか。
cf.主人公にとってのSEXは使い捨ての消耗品だ。ワンナイトラブばかり。私生活にSEXを持ち込まない。SEXが自分の私生活、人生を左右するようにはしない。人生を左右するようなSEXとは恋愛だ。一方で、主人公の妹はワンナイトラブの相手にすら精神的に依存し、私生活は破滅的だ。この点において主人公と対比的である。妹は主人公にとって反面教師なのか?それとも兄妹の育った家庭にはなんらかの問題があって、兄は「そう」ならないよう性を恋愛と切り離す一方、妹は「そう」なってしまったのか?映画における主人公兄妹の親の不在は、かえってそのような生育環境の影響を感じさせる?

f(unction)