「感動の「代償」に納得ができない」おおかみこどもの雨と雪 大江戸800野鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
感動の「代償」に納得ができない
当時劇場で観ました。
観終わったときの印象としては決して「悪くは無かった」のですが、
何か釈然としない・・・。
なぜかというと、本作がもたらす「感動」には、細田監督の「仕掛けた(仕向けた)工作」が多すぎるからです。
この作品を「成立させるため」に、細田監督が「作り上げた要素」、「蓋をした要素」というものがあります。
所詮は「作り話」なのですから当然なのですが、細かいところに現実味が感じられないために、一見リアルに描かれた描写すら、精巧に作られた偽りの世界に思えてしまうのです。
たとえば、主人公の前に現れる「彼」ことオオカミ人間。
彼の「本名」は劇中では最後までわかりません。
細田監督は「観る人が自分の大切な人の名前を当てはめてくれれば」と言っているそうですが、それは「言い逃れ」です。
細田監督にも彼の本名が「分からなかった」のです。
そもそも彼の設定を「まじめに考えていない」から、本名はおろか、生い立ちについても曖昧で、「彼が生き続けている」と、主人公が「苦労をしない」から、細田監督は彼を殺してしまうのです。
監督にしてみれば、主人公が彼の子供さえ作ってくれれば、「おおかみこどもの雨と雪」の物語は作れるわけですから、それ以上の彼に関するディティールには「興味が無い」のです。
だから、「用済み」の彼は殺されるのです。
おかげで主人公は「どうやって狼人間を育てればよいのか」が分からず、悪戦苦闘をします。
でも、主人公に「悪戦苦闘をさせた」のは、他でもなく「細田守監督」です。
夫を亡くした主人公たちが田舎に逃げなければいけなくなったのも、彼女に様々な「刺客」を送り込んできた「細田監督」のせいです。
主人公の物語が成立する環境を「監督が整えている」わけですから、主人公があのような生活をするようになることは「必然」なのです。
「これが物語か?」とさえ思ってしまいます。
本作で感動した人はたくさん居ると思いますが、その感動を作るために「監督のしたこと」が、僕には納得できませんし、許せません。
とても面白い解釈でした。
おかげで主人公はどうやって育てればいいかわからない、悪戦苦闘させたのは監督、思わず膝を叩きました。
なーるーほーどー!
ほんとですね。
やよ様
こちらこそ、今回、自分がこの作品に対して「何を感じたのか」を、
改めて考えることができたことはとても良い経験だったと思います。
実は母にも
「文句言ってる割には何度も観てるじゃない。結構好きなんじゃないの?」
~と、言われてはいるのです(笑)。
いずれにしても、僕にとって本作が「無関心ではいられない作品」なのは事実だと思います。
今後も自分なりのレビューを続けたいと思いますので、
また機会がございましたら、是非ご覧ください。
ありがとうございました。
大江戸800野鳥様
丁寧なご返答有難うございます。
これだけ細かに映画の内容覚えてらっしゃるのを拝読し、この映画好きなんじゃ?と思ってしまいました。(笑)
私はこの作品好きですけど、恥ずかしながらそこまで詳細に記憶していないので…。
私は数を観るほどにだんだん、ただ人が病気等で死んで涙を誘うような作品が安直に思えてきて、そういった作品を避ける時期がありました。
そんな単純な話では無いのですね。
物語を深く理解する中で、こういった解釈も出てくるのだと、大変勉強になりました。
やよ様
コメント、有難く頂戴いたします。
普段は、作品の中で起きる出来事を、いちいち「作者の仕業」だなんて思いません。
単純に「物語が面白いかつまらないか」です。
もっというと、作者が「このキャラクターを殺すことは最初から決めていた」というとに
「感銘する」ことも、作品によってはあります。
でもこの作品については、「自然な物事の流れを無視して、有り得ないことが起きすぎている」のが
どうにも納得できません。
(作り手は、劇中での出来事が『ごく自然な流れ』かのように仕向けては居ますけど)
得体の知れない男性のことが頭を過ぎり、「・・・はっ」とか言って心惹かれる花
何の前触れもなく突然「オレ、狼男なんだ」と、変身しながら打ち明ける彼
(冒頭の雪のナレーションでの『母の愛した人は狼男でした』という説明も然り)←これを伏線というのか?
「もし狼みたいな赤ん坊が生まれたら病院がパニックになる」と思って自宅出産をする花
何でかは分からないけど、とにかく彼は狼の姿で死んでいた
生まれた子供が二人とも「自由自在に人間と狼に変身できる」
小児科と動物病院の「どっちで診て貰えばいいのかしら?」
「この二人の正体が世間に知れたら大変なことになる」と思って社会と断絶し、田舎で暮らし始める花
そうなったんだから仕方ない
そうだったんだから仕方ない
そう思ったんだから仕方ない
これが僕には「乱暴」に思えた、ということです。