「蒸し返してはヒートアップ!!」おとなのけんか マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
蒸し返してはヒートアップ!!
事の発端となる川辺の公園がオープニングとエンディングのクレジットバックに使われるが、本篇の舞台となるのは被害者(殴られた少年)側であるロングストリート家の住まいだけだ。いわゆる一杯飾りと言われる舞台劇といっしょだ。
この限られた空間を狭苦しく感じさせないのは、横長のスコープで撮影されたスクリーンサイズのおかげ。窓や鏡を利用して奥行きも出している。話のサイズに合わせてビスタで撮っていたら、ホントにこぢんまりとした作品になってしまっていたことだろう。
この住居に訪ねてきた加害者の少年の両親・カウワン夫妻を混じえた4人だけの会話によって話が進んでいく。
しょせんは子供のケンカという建て前で穏やかな話し合いのはずなのだが、事のしだいをタイプするロングストリート夫人が、のっけから『相手の子供が木の棒で武装して』とやらかす。
お互いのちょっとした言葉尻にピリピリしながらも、懸命の作り笑いで取り繕う二組の夫婦が可笑しい。
やがて考え方の相違が、普段の生活の問題にまで飛び火して、男同士でまとまってみたり、夫と妻の罵り合いにまで発展してしまう。これほど、傍で見ていて楽しいことはない。なにせ、人ごと、対岸の火事なのだ。
こうして、なんということのない話が二転三転するのは、ある小道具のせいで、コレの使い方が実に上手い。その小道具とは、Mr.カウワンが手放せないアレだ。
帰り支度をしてエレベーターホールまで行きながら、また蒸し返しては部屋に戻る舞台的な可笑しさと、とことんヒートアップする「おとなのけんか」の大人げなさに大笑い。こっちも笑って見てられるうちが華なのだが・・・。
この映画を見て思い出したことがある。むかし、子供のころ、父親に言われた言葉だ。
「さっき喧嘩していたと思ったら、もう仲良くなってやがる」