ゾンビ大陸 アフリカンのレビュー・感想・評価
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一見、B級ゾンビ映画だが、実際はロメロゾンビの正統後継作
邦画タイトルのせいで損しているが、ロメロ監督の「走らないゾンビ」の系統を受け継ぐ、至極真っ当なゾンビ映画。
目新しいのはアフリカ大陸という広大な土地が舞台ということ。サバンナや砂漠地帯を彷徨うゾンビの姿もなかなか絵になる。特に、夕闇が迫り、赤く染まる大地を背景にゾンビがシルエットとして蠢くシーンは美しさすら感じる。ゾンビの襲来も怖いが、日中の陽射し、水や食料の不足、夜の底知れない闇の深さなど、大自然の中に取り残されることも驚異となる。
ただ、舞台が広大すぎてゾンビの人口密度が低く、画面からではどうにもならないような絶望感は伝わってこなかった。車で移動中とかでも、ほとんど周囲にゾンビを見かけないのに、車の故障などで止まった途端に何処からかわらわらと寄って来るのはちょっと不自然でしたね。実際、米軍が撤退するほどゾンビが多いようにも見えず、世界規模でゾンビ禍が起こっているような終末感は感じられなかった。
また、これも広大なアフリカ大陸が舞台のせいで「行ける場所」に制限があり過ぎて、ストーリー展開に変化や意外性が生まれにくいのが残念。主人公と相方も米軍基地以外に目指す場所の「選択肢」が他に無いので、中盤辺りの、移動→休憩or車のトラブル→ゾンビ襲撃→移動、の繰り返しが退屈でした。当然、ショッピングモールのような施設も無いので、よくある「生き残った人間こそが敵」という定番の展開になる事もありません。逆に、せっかくアフリカが舞台なのにライオンやトラ、チーターなどの野生動物がまったく見当たらないのが不自然で、肉食獣のような猛獣を利用してゾンビを撃退するような、この作品ならではの「工夫」が見たかったですね。
ラストにしても、ゾンビによる絶望感よりも、車や飛行機のような「移動手段が無い」ことの絶望感の方を感じる終わり方でした。真っ当なゾンビ映画ではあるのですが、アフリカ大陸という舞台が活かしきれていない印象を受けました。
タイトルなし(ネタバレ)
アフリカで突如蔓延したゾンビウィルスにより駐留アメリカ軍は一般人とともに撤退を開始するも、撤退途上の機内で乗客がゾンビ化して海上に墜落。数名の生存者は命からがら海岸に辿り着くも、すぐさまゾンビの餌食となり、エンジニアであるマーフィ中尉だけが生き残る。ゾンビ発生で壊滅状態となった村に辿り着いたマーフィはその村出身の西アフリカ軍兵士デンベレと出会う。奇跡的に軍に救出された息子を探すために軍基地を目指すデンベレと家族が待つアメリカへの戻りたいマーフィは共に行動するが、行く先々で過酷な現実を目の当たりにする。
原題"The Dead"が暗に示す通り、オールドファッションで真面目なイギリス産正統派ゾンビ映画。CGも効果的に採用した容赦ない人体損壊描写は悪趣味に堕することなく理不尽な死の向こうに生の尊さを浮き彫りにし、残酷なまでに広大な砂漠で寡黙な二人がそれぞれの思いで死を掻い潜り、友情を育み、死屍累々の果てに辿り着いた境地に目頭が熱くなります。
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