「過去の事実は変えられないが、今を肯定できれば今を形成してきた過去も肯定できる。」ノア 約束の舟 Mabさんの映画レビュー(感想・評価)
過去の事実は変えられないが、今を肯定できれば今を形成してきた過去も肯定できる。
新宿にて観賞後喧噪に揉まれ、人間多過ぎるな。あの時ノアはあの子たちを殺めていれば、、、と思えば、「より善く生きよう、もっと自然を感じたい」と思ったりもした。
監督の過去作、ファウンテンのモチーフが散見されたが、それよりエンターテイメント性をあげようとしていた風に見受けられた。
旧約聖書自体ファンタジーであるのだけど、こちらの勝手な思い込みで歴史物として捉えてたところ、”番人”の登場によってロードオブザリングのような空想ものに寄せられ、若干入り込みのハードルをあげられてしまった。
ーー ある一つの決断を下す ーー
マイケルサンデルの正義の話にもあったような「究極の選択」がこの映画の裏テーマだったのかと思う。
僕たちが今生きている現在は過去の様々な選択から成り立っており、その過去の選択に”もしも”を考える事は多いが、それこそファンタジーでしかない。
過去の選択・判断は今を作り、その今に満足できないのであれば我々が次の一歩を決めればいい。そういう非可逆性の時間軸上にこの世界は成り立っている。
子供の頃、バタフライ効果という言葉を知って自分の一挙手一投足に恐怖を感じるという頃があった。一つの小さな事象が思いがけない方向に発展していくというやつだ。
今となってはそんな事考えもしないが、それでも人々の言動・行動は次の人々を形成し、他人を影響し社会を形成していく事実はある。
そんな中で僕たちは何を考え行動していけばいいか。
この映画でノアは信仰を最大の選択としていたが最後は愛と慈悲を選んだ。
それが正しいか否かは未来の僕たち次第だ。
過去の事実は変えられないが、今を肯定できれば今を形成してきた過去も肯定できる。
そう過去の判断が正しかったと言えるように今を生きていく事が大切だよ、とこの映画は言っていたのかもしれない。
少し飛躍しすぎかもしれないが。