「ち○○がいっぱい」マジック・ランタン・サイクル よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
ち○○がいっぱい
ち、ち○○のことしか覚えてない。。
途中で地震があったのだが、
(これ、もしこのままビルが倒壊したら、最後に目にしたものがこの映画ってことになるのか。ちょっとやだなあ)
って真面目に思った。
短編映画をまとめた作品集なのだが、いずれもストーリーみたいなものはあまりないので、読み解くのが相当に難しいというか諦めた。これは映像を楽しむものだ。
そんな中、「スコピオ・ライジング」だけは例外的に分かりやすい。というか、監督の背景を何も知らなくても、ああこれはゲイムービーなんだって分かるくらい露骨。
エンジンのついてる乗り物というのは大概男性名詞だが、この作品はその中でも徹底的にバイクに拘る。バイクに上半身裸の男。この組み合わせは確かにセクシーだ。
そして映像は、髑髏や銃、ジェームス・ディーン、ドラッグ、と死の象徴をこれでもかというくらいに上乗せしていく。そもそもがバイク自体常に死と隣合わせの乗り物だし、タイトルにも使われるサソリ(映像内でも繰り返しモチーフに使われる)だって、死または死を賭したゲームの象徴だ。
そして、生が女性性の象徴だとするなら、対極の死は男性性の象徴だ。更に映像はふざけあい裸を見せる男たちや服を剥き性器を顕にさせる男たち、果ては教会でふざける男など、聖性の冒涜を重ねていき、死=悪魔性を描くことでこれでもかというくらいに男の世界を強調していく。
それは恐らく、監督自身が欲して止まない世界の描写なのだろう。男性として男性を欲することは、割と短絡的に悪魔崇拝に繋がるものであるのは歴史が証明しているし、暴力や死のイメージが男性性をより強化するのも、チキンレースやロシアンルーレットなどの度胸試しを見れば自明のことだ。
もう1本、「花火」も凄い。男の裸と暴力、そして男根や精液のイメージ。ああ、これが欲しいんだな、とよく分かる。
私自身はゲイの気持ちは全く分からない。ただ、自分の欲するものをこんなに直截的に表現できる才能って凄いな、と圧倒された。
なお、「花火」の花火ち○○については、『鉄男』におけるドリルち○○ばりに分かりやすく、かつ大胆な描写でびっくりしたことだけは付記しておく。