「エリートの再生産?」高校 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
エリートの再生産?
F.ワイズマン特集 - その1
アメリカ独立宣言が採択された歴史ある土地・フィラデルフィアにある高校の1960年代の日常を捉えたドキュメンタリーです。
時は公民権運動が吹き荒れる時代、キング牧師暗殺事件も本作撮影中に起きたのだとか。授業の様子は勿論、生活指導、進路指導、先生同士の話し合い、性教育、生徒の音楽会など様々な面が映し出されます。
恐らくここはいわゆる進学校なのでしょう、「大学進学」と言う言葉がしばしば登場します。また、黒人生徒が殆どいないのも土地柄なのかも知れません。いや、時代の反映なのかな。
そして、作品中盤あたりでふと気づいたのですが、本作では生徒たちの笑顔が映る場面がかなり少ないのです。一方で、先生達は強圧的に映ります。「停学だ」「出て行け」などという言葉が度々出て来ます。「この時代にはこれが普通の先生 - 生徒 の関係だったのかな」と思っていたのですが、観終えてから、「いや、ワイズマンはこの時代にあっても『こうした関係性はおかしいのではないか』と考えていたのかな」と思い直しました。
でも、ここがエリート校であったのなら、本作で取り上げられていた生徒たちの中には功成り名を遂げて2000年代のアメリカをリードした人も居たのかも知れません。そんな人達は集まって酒を飲むと、
「あの先生はコワかったけど、いい人だったよな」
などと懐かしく思い出しているのかも知れません。そんな人からは同じ様な教育が再生産されて行くのでしょう。
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