劇場公開日 2013年3月23日

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「キライな自分をぶっ壊せ!!」シュガー・ラッシュ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5キライな自分をぶっ壊せ!!

2013年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

劇場鑑賞から4ヵ月経ってようやくのレビュー。
いくら何でも書き上げるのに時間かかりすぎだが、
まあDVDリリースには間に合ったってことで(笑)。
どうでもいい事情はさておき、映画の話。

ゲームの世界を舞台にした本作。
実在のゲームキャラ(という言葉もよく考えたらヘンか)が
わらわら登場すると聞いた時は、有名キャラの人気にかまけた
ギャグや設定ばかりの映画になってやしないかと危惧していたが、
フタを開けてみれば何のその!
有名キャラはあくまでスパイス。メインキャラの魅力、
練り上げられた世界観、そしてストーリーの妙まで、
これぞディズニー&ピクサーの真骨頂!※と唸る大秀作だった。

新旧を問わず、テレビゲームをかじったことがある方なら
これでもかと盛り込まれた小ネタの数々にニヤリとすること必至。
パックマンのお化けやクッパ大王などの大スター(?)の登場も
楽しいが、その他のこだわり抜いた遊び心もニクい。
とはいえマニアックには走り過ぎず、『何となく知ってる』という
レベルの人でもしっかり楽しめる作品になっている。
この辺りのバランス感覚の良さはさすが。

ジャンルの違うゲームどうしの関わり合いや、
ゲームキャラにとっての恐怖とは何かなど、世界観というか
物語上のルールみたいなものを説明するのも抜群に上手い。
観客おいてけぼりのまま勝手に盛り上がって終わっちゃう映画は
世の中にたくさんあるが、この映画はそうはならない。
一連の騒動の黒幕が判明するシーンは見事なサプライズだった。
こんなにキュートでポップな雰囲気のCGアニメなのに、
『うっわ、そういう事だったの!』と軽い戦慄すら覚えましたよ。

疾走感バリバリのレースシーンやアクションシーンも盛り沢山。
細かなキャラや背景まで隅々まで描かれた画は贅沢だし、
3Dとの相性が良いシーンも多く、画的な満足度も高し!

そしてもうひとつ、ピクサー作品で必ずと言って良いほど
貫かれている『骨』の部分もガッシリしている。
すなわち、自分の身勝手さで大きな失敗を犯した主人公が、
失敗を修復しようともがく内に成長していくという強固な骨格。

誰にも好かれない悪役である自分と、壊すだけしかできない
自分の力を嫌っていた主人公ラルフ。
あれだけ嫌っていた自分の力を、大切な人を守る為に使う。
カートを◯◯するシーンには胸が苦しくなったし、
それを乗り越えた上でのクライマックスでは、
原題『Wreck-it Ralph(ぶっ壊せラルフ)』の通り、
「ぶっ壊せラルフッッッ!!」と思わず
声を上げたくなるほどに燃える展開が待っていた。

ラルフと同じく嫌われ者だったヒロイン・ヴァネロペ(生意気
だがめちゃくちゃキュート)も、自分の目的を妨げ続けた欠点を、
ラルフの窮地を救う為にフル活用する。
大嫌いな自分でも、大切な人の力になれる。
こんなに嬉しいことってあるだろうか?

誰もが望んだ仕事にありつける訳じゃない。
やりがいがあると思えない仕事を日々こなす人間の方が、
世の中にはずっと多いと思う。
それでもそこに価値を見出だして頑張ろうと前を向くのは、
家族であれお客であれ、自分が頑張ることで喜んでくれる人が、
少しばかりは居てくれると信じているから。違うだろうか。

エンドロール間際のセリフではもう涙を堪え切れなかった。
あの名ゼリフ……あれは……反則だあの台詞は。
ラルフもヴァネロペも健気すぎるよ。
こんなの、もう中島みゆきの歌の世界じゃないのさ(笑)。
目が真っ赤なまま劇場を後にするのはとても恥ずかしいので、
エンドロール間際にこういう台詞を持ってくるのは
勘弁していただきたい(←お前の涙腺事情など知らん)。

どこを切り取っても手抜きがない、観客を楽しませる要素が
ギュッと詰まった、ほぼ死角ナシの見事なエンタメCGアニメ!
オススメ!

〈2013.03.28鑑賞〉

 ※補足:
 『ディズニー&ピクサー』と書いた理由。
 ディズニーは2006年にピクサーを子会社化し、現在は
 『トイ・ストーリー』等の監督を務めたジョン・ラセターが
 ディズニーアニメ部門の最高執行責任者に就任している。
 就任直後、当時ディズニーで進行中だった『American dog』
 という企画を引き取り、『ボルト』として成功させた逸話あり。
 本作でもジョン・ラセターは製作総指揮として
 企画をコントロールしている。らしい。

浮遊きびなご
グレシャムの法則さんのコメント
2019年1月6日

自分のレビュー欄のコメントで返信してしまったので、念の為。
くれぐれもご無理なさらず、健康第一、ご自分のペースでお過ごしください。
今年が、一段と充実した一年となりますよう祈念しております。
(返信無用ですからね^_^)

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2018年12月31日

観ました‼️
まだ自分の思いがうまく言葉に整理できないのであとでレビューできれば、と考えてますが、取り敢えずフェリックスですね。『自分は直す(英語的な語義の範囲はよく分かりませんが、治す、という意味も感じさせる深さがありますね)ことしかできない』という苦悩がさりげなく描かれてましたが、凄いですね。
世の中には評価されていても、自分に課せられた役割をこなしているだけでいいのだろうか?と悩んでいる人もいます。
人の悩みは軽重比較するものではないし、意味がありません。他人からは贅沢な悩みと言われるようなこともきちんと捨て置かずに描くこのシリーズの魅力の一端だと思います。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2018年12月26日

私の拙いレビューをかなり遡ってご覧いただいたようで恐縮です。少なからぬ共感ボタンについても痛み入るばかりです。まずはひとこと御礼まで。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2018年12月25日

前作も知らず、ゲームのこともよく分からないのに、『オンライン』が余りに楽しくて深味があったので、こちらに辿り着きました。
ネタバレしないよう気を遣いながらもワクワクさせられるお手本のような素晴らしいレビューですね。
共感ボタンはちゃんと作品を観てから押しますので少し待っててくださいね^_^
おかげさまで年末の楽しみがひとつ増えました。深謝‼️

グレシャムの法則