「満点もらえる仕事ぶり。」シュガー・ラッシュ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
満点もらえる仕事ぶり。
例えば俳優は仕事でとある人物を演じているが、人気ドラマや
人気シリーズともなれば、延々とそのイメージを抱かれ続ける。
定着するのは人気同様、そのキャラクター=本人というわけで、
今回のディズニーアニメは、その感情を巧く掬いとって観せた。
実際に観てみるまで何がそんなに面白いのか分からなかった。
座席予約をとる際にも(平日ですら)ほぼ満席状態、
確かに春休み中ではあったが、この人気は何?と感じていた。
やだな~^^;おこちゃまに囲まれてオバサン一人ってのもな~^^;
なんて危うく地団駄を踏みそうになったけれど、観て良かった!
クライマックスなんか、ついに泣きそうになった。
自己犠牲が何もかも美しいとは限らないが、適材適所を知った
主要メンバーが今、ここをどう演じるべきかを問われたとしたら
今作のラルフは100点満点をもらえる働きをする。自分にとって
最高の居場所は悪役に徹することだと気付いた彼の清々しさ。
英雄には英雄としての苦悩が^^;あったりするもんなんだわね…
フェリックスの優柔不断ながら友達想いなのも泣けてきちゃうし。
やたら社会の縮図を観せるような展開に大人でも惹き込まれる。
ベテランが若手に抜かれる瞬間や、常に世間の流れを掴んでは
ゲームに反映させなければ落ちこぼれていく容赦ない競争社会。
そんな世界で何十年も(たとえばベストテン内に)君臨することの
難しさを、まさかこのアニメがまざまざと見せつけてくるとはね…。
ゲームにはとことん疎いので、それぞれの元ネタは分からず(残念)
しかし悪役が揃って裏でセラピー(ホント好きよね、向こうの人は)を
受けているところなんか本当に笑える。郷に入ったら…っていうのは
世知辛い伝え文句ともいえる。自分の勝手とは無縁で容赦がない。
さて、コンセントを通じて(爆)他ゲームの世界に入り込んで、見事
メダルをゲットしたラルフだったが、その後に入った女の子ゲーム
シュガー・ラッシュで、仲間外れにされているヴァネロぺという子に
まんまと奪われてしまう。やたら自信家の彼女がなぜこのレースに
出られないのか?ここが今作の肝になるんだけど、まだこの時点で
その謎は分からない。どうやらシステムの不具合が原因らしいけど…
彼女の願いを叶えてあげようと尽力するラルフに対して周囲は冷たく、
ゲームの大王からは、彼女が優勝すればゲームの末路がどうなって
しまうかを聞かされる。どのゲーム機も「故障」の札を貼られ回収されて
しまうことを何より恐れているのね。そこでラルフがとった行動とは。
これ、モデルは絶対日本人だろう(そうなんですけど)のヴァネロぺ、
まんまるデカいお目目に(爆)派手なファッション(原宿系でしょうかね)
日本文化がこういうところで大いに影響を与えているのはホント愉快。
ピクサーと合体してからのディズニーが、かなり考えを柔軟に変えた
のも、まぁそれが興行的ヒットに繋がることが実証されてきたからか。
ゲームの歴史を語る場面での重要な伏線が、ラストで出した答えとは…。
何でも一番になりたがる誰かさんに聞かせてやりたくなるオチのつけ方。
汚い手段で得た名声などどっかで化けの皮が剥がされるといういい例だ。
元の才能(それぞれの)を如何なく発揮できる現場で、脈々と仕事に励める
環境作りこそ大切!と、オトナ社会に向かって声高に叫んでいる意欲作。
短編「紙ひこうき」は、いかにもディズニーらしい洒落た出逢いが美しい。
(一番高い所から見る最高の景色も、ひとりで見てたら寂しいものかもね)