「サイボーグ戦士 誰がために戦う」009 RE:CYBORG 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
サイボーグ戦士 誰がために戦う
石ノ森章太郎の傑作漫画。
3度TVアニメ化され、2度目のアニメ版は以前レンタルで見た事あり、非常に面白かった。(♪サイボーグ戦士 誰がために戦う〜…という主題歌も印象的)
それぞれ特殊能力を持った9人のサイボーグ戦士という設定がワクワクさせ、各国の戦士が集う姿は現在のグローバル社会を予見したよう。各々のドラマもあり、物語も単なる勧善懲悪ではない。
石ノ森章太郎の死去で未完のままなのも伝説的で、日本のヒーローの中でも屈指の作品と言えるだろう。
そんな伝説的な作品が現代に復活。
しかも、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」などクオリティの高い作品で知られる神山健治監督の手によって。
これ以上ないコラボレーション。
原作漫画は米ソ冷戦時代を背景にした物語だが、テロや国際情勢など現代を舞台にし、かつて世界平和の為に戦い解散したサイボーグ戦士たちが未曽有の危機に再び招集する所から始まる。
世界各国で超高層ビルの連続爆弾テロが発生。何の接点も無いように思えたが、“彼の声”に煽動されていた事が明らかになる…。
物語のキーとなっているのは、“彼の声”と、“天使の化石”と、“彼の声”を聞いた者が見る謎の“少女”。
ネタバレになってしまうかもしれないが、それらは謎のまま終わる。見た人によって解釈が出来る。
“天使の化石”と“少女”は解釈が難しいが、“彼の声”については一つの答えが導き出せる。“彼の声”とは即ち、“神の声”だろう。
本作のベースになっているのは、原作漫画でも未完の“神々との闘い編”。
神は人を作り、人を愛し、その一方で神ほど人を殺した存在は居ない。
人は神を信じ、神に助けと救いを求め、その一方で人は神を捨て、神の領域に踏み込もうとする。
神の人に対する嘆きと悲しみ。
だが神とて、無意味に世界を滅ぼし、人類をやり直そうとしていた訳ではない。“声”を真に理解し、託せる者を探していたのだろう。
それを悪しく利用しようとする愚かな者たちも現れる。人の神に対する傲慢。
そんな混乱から世界を救うべく戦うサイボーグ戦士たち。
時に人に存在意義を否定され、全ての罪をなすりつけされようとも、何故世界の為に戦う? 誰がために戦う?
主人公009=ジョーも“彼の声”を聞き、ビルを爆破させようとしていた。しかし、それに抗った。神に問いかけ、人の希望を信じた。
その先に、彼は理想を見た。