劇場公開日 2012年1月28日

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「フーバーの人生描写の信憑性と、長々と描写される老いたる姿に…」J・エドガー KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 フーバーの人生描写の信憑性と、長々と描写される老いたる姿に…

2025年7月26日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

クリント・イーストウッド監督作品だから
というよりは、
フーバー長官はその立場を使った秘密情報
から歴代大統領をもコントロールしたとの
ことなので、本来は彼の影の政治力の面に
注力して観たい作品だった。
しかし、事前の情報では彼の同性愛等、
私的な面がクローズアップされているとの
ことだったので、
少し心配しながらの鑑賞となったが、
その心配は杞憂だった。

副長官との同性愛への触れ方が、
彼の自称正義感的な信念に基づく人生描写を
妨げることはなかったし、
彼の晩年と若い頃の場面変換には
イーストウッドの名監督としての
見事な力量を感じることが出来た。

それにしても、
この物語の信憑性をどう捉えたらよいのが、
私のこの映画への最大の問題となった。
なにせ、フーバー伝記の速記録記者が、
「爆破事件時の司法長官宅を訪れた青年が
フーバー長官だとほのめかして書きます」
とか、最終盤で副長官が、
「君の口述原稿を読んだ」「君の創作だ」
との会話から、
エンターテイメントとしては面白い構成
なのかも知れないが、
何が真実なのかが分からなくなる構成
だったからだ。

しかし、それを差し置いても、
演出と脚本の質の高さなのか、
見事に練られた構成に脱帽させられた。

また、気になったのが、エドガーの口から
繰り返し発せられる「ミス・ガンディ!」だ。
同性愛者のように描かれたエドガーだが、
果たして、
彼女に対する想いの真実はどうだったのか。
エドガーにもあったであろう異性への想いを
イーストウッド監督が汲んだものだった
のだろうか。

さて、
フーバーは48年もの長い間、
長官の座にいて、
77歳で長官のまま病死したようだ。
副長官共々、そんな弱々しい体力の衰えた
老いたる姿を長々と見せつけられたのは、
権力者は長くその座に留まるべきでは無く、
また、年老いた場合は早々に次の世代に
権力のバトンタッチすべきことを
伝えたいがための強調演出のようにも。
もっとも、イーストウッドは
彼らを年齢的に遙かにしのぐ老映画監督に
今はなってはいるのだが。

KENZO一級建築士事務所
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