「現代裏アメリカ史、その張本人の「愛と死」」J・エドガー 梅薫庵さんの映画レビュー(感想・評価)
現代裏アメリカ史、その張本人の「愛と死」
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「J・エドガー」@丸の内ピカデリー初日。監督の手腕もさることながら、注目は脚本、ガス・ヴァン・サント監督の「ミルク」の脚本家、ダスティン・ランス・ブラック。「J・エドガー」は実のところ、その「ミルク」と表裏をなす映画だ。
自身がゲイでもあるブラックは、「ミルク」で、同性愛者で初めて公職についたハーヴィー・ミルクを自分に正直な人間と描いたが、「J・エドガー」では自分に正直に生きることができず、内面に鬱積せざるを得なかった権力者、エドガー・フーヴァーを淡々と描いている。
そして映画は裏アメリカ史を飾る人物の伝記なのだが、むしろ屈折した心情を内面に鬱積せざるを得なかった人間の悲しみを描いている。自分を思っている同性パートナーでさえ、最後まで信じることが出来なかったのが、主人公の悲劇。自らゲイである脚本家の目はこの権力者には少し同情的。
それにしてもレオ様のBL場面は衝撃。隣席の女性はその場面できゃっと声をあげていた。エドガーの生涯のパートナー、クライドを演じたA・ハマーのレオ様を見る時の潤んだ瞳が悩ましい。N・ワッツの老け役が、一番違和感無し。
「ミルク」と構成が同じなのは、主人公に過去を語らせる手法。そのために過去と現在を突飛に行き来するので、全体に脚本自体がとっ散らかった感じはある。この作品の世界に入り込めるかどうかは、ここにあろうが、自分の場合それほど気にならなかった。逆にエドガーとクライドとの場面で過去から現在、現在から過去へスリップする場面は以下にも映画的だろう。
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