「緊張感あふれる静謐な作品。ディカプリオやるやん。」J・エドガー sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
緊張感あふれる静謐な作品。ディカプリオやるやん。
正義と法の限界をテーマにしてきたイーストウッド。
だいたい私刑の執行が結末だった。
今回は権力側の立場にあるFBI。なぜ?って思ってたのだが、作品を観て納得。
FBIはそもそも、法や政治から独立した、こんなにも鋭い機関だったのか。
J・エドガー・フーバーのそれは独善的で独裁的で卑怯ですらあるけれど、彼は死ぬまで、彼なりの正義を徹底的に貫こうとした。
その姿勢はイーストウッドが過去作で表現してきたそれと完全に一致している。
そして、フーバーの人物描写が秀逸。
ディカプリオやるやん。
厳格な母親、厳しいルールを息子にも押し付け、そのおかげで彼は出世していく。
コンプレックスを抱えながらもそれを厳しく律され、厳格な人生を歩もうとするフーバー。
周囲に糾弾されながらも長年FBIの長官でい続けられたのは彼自身の努力の賜物だろう。
そして、秘書のギャンディやトルソンといった側近もまた彼に仕え続けた、というエピソードは
彼が仕えるにたる魅力的な人物だったことに他ならない。
トルソンとの関係の描き方なんかは、ほんとに上品だなと感心してしまった。
やりすぎない人物描写がホントたまらない。愛情の深さもじんと感じさせる。
にしても、アメリカの政治や歴史をあまり知らない自分の知識不足が悔やまれる。
コンテキストを知らないと楽しめない笑いや感情が、この作品にはいっぱい詰まっている。
全編を通して、静謐な印象。
暗めなライティングが緊張感や不穏な空気を醸し出してて、気がひきしまった。
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