「いったい何を言いたいのだろう、この映画は。」J・エドガー お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
いったい何を言いたいのだろう、この映画は。
FBIの創設者であり、約半世紀にわたってアメリカの権力の頂点に君臨し続けた男、フーバー長官の記録です。
彼が副長官とホモ関係であることも、大統領たちの恥部を握って脅迫して権力を維持し続けていたことも、有名な事実ではありますが、知らない人はまったく知らない話でしょう。
なにせ昔の人の話ですからねぇ……。
そこで、知ってる人にも知らない人にもストーリーを楽しませようとして、イーストウッド監督は、それはそれは苦労しています。
監督のご苦労は認めます。
ですが、その苦労のために貴重な上映時間をかなり浪費してしまっており、彼がFBIを掌握した部分も、FBIを通して米国の権力を裏側から完全に牛耳っていたという点も、あるいは彼を止めようとして動いていたケネディー大統領兄弟との対決というドラマも、まったく食い足りません。
FBIってのは、全米あわせて1万人規模の人員を擁するきわめて強力な捜査機関のはずですが、映画からは数十人規模の組織じみた貧弱感が漂って来て、チープな感じが否めませんでした。
従ってストーリーだけなら1点でも不思議ではない作品でした。
この映画で評価できる点は、特殊メークです。
人間の半世紀分をそれぞれ同一の俳優が演じるのですが、老人になってもまったく違和感を感じさせないメークが施されています。
どアップにしても、なお違和感がないのです。
この特殊メーク術は、これぞハリウッドの底力と感じました。
というわけで、長尺の映画ですが、特殊メークの勉強をしたい人と、よほど時間を潰す必要がある人以外にはお勧めできません。
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